土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

株式会社エンバイオ・ホールディングス(東証マザーズ:6092)グループ

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発表論文

ダイレクトセンシング技術を用いた原位置浄化工事設計の事例

(著作者)
  • 小川えみ1
  • 草場周作1
  • 川上俊介2
  • 結城真一2
  • 佐藤正幸2
  • 佐藤瑞穂2
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2アサヒ地水探査株式会社

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1.はじめに

ダイレクトセンシング技術とは、ボーリングロッドの先端に特殊なプローブを取り付け地中へ貫入することで、試料を採取することなく、地下における汚染物質の分布、地盤の透水性等をリアルタイムで測定する ボーリング調査技術である。このうち、膜界面サンプリング法(以下:MIP)で用いるプローブ(以下: MIPプローブ)には、地盤の電気伝導度(以下:EC)を測定するための電極、および、土壌・地下水に含まれる揮発性有機化合物(以下:VOCs)をガス化し取り込むブロックが取り付けられている。取り込まれたVOCsは、MIPプローブからボーリングロッド内、地上の検出器まで通したコード内を通り、検出器にて全 VOCsとして連続的に測定される。MIPは、試料採取を行わずリアルタイムに全VOCsおよび地盤ECを連続的に測定できるため、通常のボーリング調査と比較し、調査の速度が速く、汚染の見逃しが少ない。図1.1に MIPシステムの全体図を示す。

図1.1 MIPシステムの全体図

土壌汚染対策法にて第一種特定有害物質として指定される全11物質(以下:第一種特定有害物質)は、全てVOCsに分類される。これら第一種特定有害物質および油分の原位置浄化工事では、汚染源における局所的な高濃度汚染域とその周辺に広がる低濃度汚染域を3次元的に明確に区分することにより、効率的かつ効果的な施工が可能となる。
また、10mメッシュでの土壌ガス調査による汚染平面範囲の特定が技術的に困難であると判断されるサイトにおいては追加のボーリング調査が必要となるが、本技術を用いることにより低コストで必要な情報を取得することができる。

しかし、第一種特定有害物質は油分との複合汚染として地下に存在するケースが多く、例えば、機械工場では切削油とTCEや1,1,1-トリクロロエタン(以下:1,1,1-TCA)、クリーニング工場では石油系溶剤とテトラクロロエチレン(以下:PCE)による複合汚染が存在するケースが多くみられる。このように揮発性有機 塩素化合物(以下:塩素化VOCs)と揮発成分を含む油分が共存する場合、従来日本国内でMIPの検出器に用いられてきた光イオン化検出器(以下:PID)や水素炎イオン化検出器(以下:FID)では、塩素化VOCsと油分の揮発成分の両方を全VOCsとして測定し、別々に検出できないため、MIPの適用が困難であった。

本研究では、MIPの検出器にて、塩素化VOCsを選択的に検出するハロゲン選択型検出器(以下:XSD) をPIDやFIDと併用することで、複合汚染サイトにおけるMIP調査の精度を向上させる検討を行った。本稿では、XSDおよびPIDを用いた室内試験によるXSDの性能評価の結果、および、事例として、複合汚染サイトにおけるXSDおよびPIDを用いたMIP調査の結果を報告する。

2.室内試験による検出器の性能評価

2.1 PIDおよびXSDの調査対象物質に対する反応性の整理

まず、第一種特定有害物質および油分に対するPIDおよびXSDの予想される反応性を、各検出器の検出原 理および汚染物質の物性にもとづいて整理した(1(表2.1)。

図1.1 MIPシステムの全体図

2.2 室内試験による代表物質に対するPIDおよびXSDの反応性の検証

2.2.1 室内試験の結果

次に、表2.1に示す物質の中でも、土壌・地下水汚染事例が比較的多く見られる、1,1,1-TCA、TCE、ベンゼンを代表物質として選定し、それらに対するPIDおよびXSDの反応性を実際に確認することを目的として、室内試験を行った。室内試験は、各物質の原液の入ったガラスバイアル瓶の口をMIPプローブのVOCs取り込み口へ5秒程度かざしてVOCsをMIPシステムへ導入し、PIDおよびXSDの反応を確認する方法により実施した。
表2.2に試験時のMIPシステムの設定条件を、図2.1、2.2、2.3に物質毎のXSDおよびPIDの反応結果を、それぞれ示す。
室内試験に用いられた代表物質に対するPIDおよびXSDの反応は、予想通りであった。なお、PCE等の他の物質については、検証を実施しなかったが、これらは、全て今回室内試験に用いられた3物質のいずれかと類似した物性を持つため、PIDおよびXSDの反応は、表2.1に示す通りとなると考えられる。
上記より、PIDおよびXSDを用いたMIP調査は、塩素化VOCsと油分による複合汚染サイトにて、地下における塩素化VOCsの分布の測定に適用可能であることが確認できた。

表2.2 試験時のMIPシステムの設定条件
表2.2 試験時のMIPシステムの設定条件

3.実汚染サイトにおける調査

3.1 対象地概要

図3.1 代表的な柱状図

対象地は操業中の機械部品製造工場であり、PCE、TCE、シス-1,2-ジクロロエチレン(以下:cis-1,2-DCE)、1,1-ジクロロエチレン(以下:1,1-DCE)、1,1,1-TCA、およびベンゼンを含む油分による土壌・地下水汚染が存在し、揚水による浄化対策が継続中である。
地質構造は図3.1の代表的な柱状図に示すように、表層部は埋土、深度2.5m程度まではローム、深度2.5m~4.0m程度は粘性土層、その下位が砂層となる。地下水位は深度5.0m程度であり、砂層が不圧帯水層をなし、当該柱状図には未記載であるが深度9.0m 程度以深の粘性土層が帯水層基底となる。
汚染の分布は、塩素化VOCsと油分の両方とも砂層まで到達し、砂層で水平に拡散している状況である。
図3.1のEC(mS/m)は、本試験において測定した地盤の電気伝導度であり、電気検層と同じ原理により、粘性土層で相対的に高い値を示す。図3.1の調査地点においても、深度2.5m~4.0m程度の粘性土層、深度9.0m程度の砂層と粘性土層の境界面を検出している。初期段階で数本のオールコアボーリングを実施して、ECとの相関を取 ることにより、ノンコアでのMIPの調査においても地質構造を把握することが可能となる。

3.2 PIDおよびXSDを用いたMIP調査

本調査では、MIPによる測定を実施した後、同地点にて、土壌および地下水を採取し、MIP測定結果と採取した試料の測定結果を比較した。試料の測定は、PIDにて反応が見られた深度の土壌および地下水では油分由来のVOCsの測定項目(表3.1参照)、XSDにて反応が見られた深度の土壌試料および地下水の塩素化VOCsの測定項目(表3.1参照)について、室内分析を実施した。なお、MIPは、その測定原理から、土壌溶出量よりも土壌含有量に対して相関性が高いことが予想されたが、土壌汚染対策法で指定される第一種特定 有害物質の測定方法は土壌溶出量測定であったため、土壌溶出量を採用した。
採取試料の測定仕様を表3.1に、地点1の採取試料分析結果一覧を表3.2に、地点1におけるMIP測定結果 および採取試料分析結果(抜粋)を図3.2に、それぞれ示す。

図3.1 採取資料の測定仕様
図3.2 地点①におけるMIP測定結果 および採取試料分析結果(抜粋)

 

表3.2 地点①の採取試料分析結果一覧

PIDの測定結果では、GL-4.8mおよび5.0mにて大きな反応が確認され、分析においても0.001mg/l~0.002mg/lと低濃度ではあるがトルエン、エチルベンゼン、キシレンが検出された(表3.2)。それに対し、XSDの測定結果では、GL-3.2m付近からGL-8.0mにかけてわずかに反応している程度であり、非塩素化VOCsに対しての測定結果の差は期待どおりのものとなった。
塩素化VOCsについては、XSDでわずかな反応しかなく、分析においても土壌で検出限界未満であったため、性能を評価できなかった。XSDのわずかな反応は、土壌に含まれる塩素化VOCsに起因とするものと思われるが、土壌溶出量測定において検出限界未満となる程度の微量であることから、評価のためには異なる分析方法で試験する必要がある。
また、PIDでは地下水位(GL-5.10m)以深においても大きなピークが認められているが、土壌の分析結果はいずれの項目も不検出であり、混合物である油分の中の分析対象外の物質を検出していると考えられる。ただし、地下水濃度おいて、ベンゼンが0.014mg/L、トルエンが0.13mg/L、エチルベンゼンが0.055mg/L、キシレンが0.068mg/L、cis-1,2-DCEが0.024mg/Lと土壌溶出量より高い値で検出されており、土壌汚染が低濃度な地点において地下水汚染がMIP調査に及ぼす影響についても、XSDの性能評価とともに検証が必要である。

4.今後の展望

今回実施した実汚染サイトにおけるMIP調査では、塩素化VOCsの濃度が非常に低く、XSDにおける明確な反応が見られなかったため、実際に塩素化VOCsと油分が共存した場合に、XSDがどのような測定結果を示すか確認できなかった。また、MIPは土壌・地下水中に存在するVOCsを揮発させて取り込むため、土壌溶出量よりも土壌含有量による測定の方が、相関性が高いことが予想される。今後は、塩素化VOCsがより高濃度で存在するサイトにて同様の調査を実施し、土壌の分析において含有量測定も併用することで、複合汚染サイトにおけるMIP調査の情報を蓄積していきたい。

[参考文献等]

1)

Christy, Thomas M., PE.“A Permeable Membrane Sensor For The Detection of Volatile Compounds in Soil.” Membrane Interface Probe (MIP) Paper by Thomas M Christy, P.E. Geoprobe Systems, 30 Dec. 2013. Web. 3 Mar. 2016.
http://geoprobe.com/literature/membrane-interface-probe-mip-paper-by-thomas-m-christy-pe.

2)

Pipp, Dan.“Tech Note: MIP-XSD Detection of Cis-1,2-DCE.” MIP-XSD Detection of Cis-1,2-DCE. Geoprobe

研究集会でのQ&A

1mあたりの測定時間はどれくらいですか?
測定条件の設定および土質によりますが、通常は4分間で1mを測定します。
測定結果はどのぐらいの時間で見られますか?
測定位置にプローブが接してからだいたい1分程度で測定値が確認できます。
1日にできる調査数量はどのくらいですか?
土質にもよりますが、プローブの打ち込みが困難ではなく、更地の条件であれば、10mを4~5本程度実施することができます。
深度は何mくらいまで調査可能ですか?
MIPに用いるトランクラインの種類によります。今回発表した事例で使った、トランクライン内のガスが地下から地上まであたためられるタイプは、23mまで調査を実施したことがあります。もう1つのガスをあたためないタイプは、実施したことはありませんが、30mくらいまでは可能と考えています。
MIPの測定値と土壌に含まれる塩素化VOCsの量の相関性は?
基本的には、MIP測定値は塩素化VOCsの量に比例します。ただし、揮発性の油分と塩素化VOCsが共存する場合には、PIDは油分量に影響されます。XSDは、塩素化VOCsの他にフッ素等のハロゲンのついた有機化合物にも反応するため、ハロゲン系の有機化合物が共存しなければ概ね比例すると考えています。ただし、MIPの測定値は、測定時の様々な条件(存在する物質の種類、土質、プローブの温度等)に影響されるため、通常室内分析で行うキャリブレーションのような検量線をひくことはできません。調査対象地盤においてMIP調査を実施し、その近傍地点にて土壌試料を採取・室内分析し、結果を比較することで、土質、汚染物質の濃度、MIP測定値のだいたいの関係性を把握するようにしています。
既知濃度の土壌試料を準備してプローブにかがせ検量線を作成してはどうですか?
やってみることは可能であるが、実サイトでは、室内にて調製する土壌試料とは異なり、様々な状態で汚染物質や他物質が地下に存在するため、MIPの測定値は変わってしまうことが予想されます。MIPは元々スクリーニング調査に利用することを目的としてつくられており、MIPの測定値のみから直接土壌の汚染物質濃度を把握する使い方は難しいと思います。
どうしてDELCDでなくXSDを選んだのですか?
MIPの電源供給は、発電機を用います。DELCDはXSDに比較して、感度が高いため、電圧のノイズに大きく反応してしまい、現場では扱いにくいので、XSDを選びました。
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