土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

原位置化学酸化(フェントン反応)とバイオレメディエーションの複合工法とその施工事例その2(ホットスポットにおける施工)

(著作者)
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1.はじめに

1.1 原位置浄化

土壌汚染対策における原位置浄化は、他工法と比較し低コストであること、汚染土の移動による汚染の拡散リスクが低いこと、排水等がほとんどなく環境負荷が少ないこと等から、優れた浄化法の一つといえる。一方で、土壌汚染対策法において原位置浄化の措置完了条件は、地下水の基準適合を2年間継続することとされており、そのハードルは高い。この高いハードルをクリアするためには、事前に対象物質の種類、対象地の土壌・地下水の性質、汚染の分布、トリータビリティ試験結果等の様々な情報を正確に把握することや、薬剤を適切に供給する施工技術等、様々なノウハウが要求される1)

1.2 フェントン反応とバイオレメディエーション

原位置浄化には、化学酸化やバイオレメディエーションのような汚染を分解する手法があるが、それぞれに特徴があり、短所長所がある。

化学酸化の一つであるフェントン反応は、ヒドロキシラジカルに起因する酸化力を有する反応であり、反応時間は比較的短く、比較的高濃度の汚染に対応できる。よって、短工期で浄化が可能である反面、浄化を成功させるには汚染物質とフェントン反応剤との速やかで確実な接触が必要不可欠である。しかしながら、例えば沖積平野に広く存在している粘土やシルト等の粘性土は、その特徴である透水性の悪さや崩れにくさがフェントン反応剤と汚染物質との速やかな接触を妨げる。

一方で、バイオレメディエーションは一般的にフェントン反応と比較し、反応が遅く、工期が長くなってしまうデメリットを持つ反面、薬剤の種類や施工方法によっては浄化効果を長期間持続させることが可能である。従って、粘性土等に対してもゆっくりと時間をかけることで、薬剤を浸透させ浄化効果を発揮させることが可能であり、フェントン反応とは相反する特徴を持つ。この両者を組み合わせれば、お互いの短所が補われ、概念的には効果的な施工が可能である。しかしながら、フェントン反応は酸化反応であるため、反応過程で発生する強い酸化力と酸素により、嫌気的な微生物に対してダメージを与えることが考えられ、通常、同時に施工することは避けられる。

これまでに筆者らは、①速やかに嫌気状態へ移行するバイオレメディエーション促進剤を選定、②フェントン反応剤の組成を見直し、③施工方法の検討、を行った。これにより、通常は避けられるフェントン反応後の嫌気バイオレメディエーションが可能となり、室内試験や施工機械、現場の土質条件等の検討を経て、フェントン反応と嫌気バイオレメディエーションの複合工法(ハイブリッド工法)についての実施工を行った2)。その結果、ハイブリッド工法の効果を確認することができ、手法をほぼ確立することができた。さらには、予想以上にフェントン反応後の嫌気微生物の反応が良好であったことから、ハイブリッド工法の可能性を拡大するべく、より高濃度の汚染に対して適用することを検討した。

本発表では、原位置浄化を単独で行うサイトとしては比較的濃度が高い、テトラクロロエチレンが地下水において環境基準の最大460倍程度あるホットスポットにおいてハイブリッド工法の検討と実施工を行った。また、塩素化VOCsの嫌気バイオレメディエーションにおいてキーとなるDehalococcoides属細菌を定量し、施工後の菌数の変化を観察した。それらの結果を以下に示す。

2.施工方法

2.1 現地の土質と汚染状況

現地はクリーニング工場の跡地であり、汚染は主にテトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、cis-1,2-ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)であった。図1に現地の平面図と浄化範囲、図2簡易的な土質柱状図を示す。表層から粘土層、粘土質シルト層、シルト質細砂層であった。地表~GL-2.0mには腐食物が多く混じっていた。

土壌汚染は、概ね表層からGL-5.0mまで存在し、地下水にも汚染が確認されていた。なお、地下水位はGL-1.0m前後で、1m程度被圧されていた。

2.2 浄化対策の概要

表層の不飽和帯はバックホウによるフェントン反応剤の攪拌混合、飽和帯はバイオレメディエーションの原位置注入、そしてホットスポットには柱状改良機によるハイブリッド工法を行った。ハイブリッド工法の施工には単軸式の柱状改良機を用いた。柱状改良機は薬剤を吐出しながら先端にある攪拌翼で薬剤と土壌とを攪拌混合する機械であり、地盤改良用の機械として一般的に使われている。図3にバックホウによる混合攪拌の施工状況、図4に柱状改良機を用いたハイブリッド工法の施工状況を示す。

2.3 使用した薬剤

薬剤はフェントン反応剤とバイオレメディエーション促進剤を用いた。事前試験の結果、現場の土壌にはフェントン反応の触媒になりえる組成の鉄が十分量含まれていたことから、フェントン反応剤に鉄の添加はしなかった。また、バイオレメディエーション促進剤は、ハイブリッド工法を前提とした設計とし、事前試験の結果や土質等を総合的に勘案し、炭化水素系主体の薬剤を用いた。

2.4 施工の流れ

施工の流れを図5に示す。施工は不飽和帯のバックホウによるフェントン反応剤の攪拌混合を行った後、飽和帯のバイオレメディエーション促進剤の原位置注入を行った。その後、ホットスポットに対して柱状改良機を用いたハイブリッド工法を行った。

2.5 ハイブリッド工法の施工

ハイブリッド工法の施工の流れを図6に示す。ハイブリッド工法はフェントン反応剤の攪拌混合を行った後、フェントン反応が概ね終焉を迎える8h~24h後に同地点に対して、バイオレメディエーション促進剤の攪拌混合を行った。

3.結果と考察

3.1 VOCsの濃度変化

ホットスポットにおけるVOCsの地下水濃度の変化について図7に示す 。

ホットスポットにおいては、施工後3日目までにVOCs濃度は全ての項目において濃度減少がみられたものの、基準適合には至らなかった。施工後14日目においては、PCE、TCE、1,1-DCEは基準適合となったが、1,1-DCE 、cis-1,2-DCEは濃度上昇が確認された。特にcis-1,2-DCEは濃度が著しく上昇した。その後、cis-1,2-DCEは緩やかに濃度減少つづけ、67日目には基準適合した。

ホットスポットにおける施工後3日目までの濃度減少は、反応時間の短いフェントン反応単独の効果であると考えられる。しかしながら、およそ初期値の5割~9割程度の濃度低減は見られたものの、基準適合には至らなかった。これは通常のフェントン反応による分解率と比較しても、低い分解率であった。原因として、1.腐食などの有機物が多量に含まれており、フェントン反応による化学酸化が効きにくい土質であったこと、2.粘性土主体であったことから薬剤を土壌全体に均一に供給できず、汚染を分解しきれなかったこと等が考えられた。従って、仮にフェントン反応単独で施工した場合、基準適合までには複数回の施工が必要であったことが考えられる。

また、初期値が基準の460倍と高かったことを勘案すると、仮にバイオレメディエーションを単独で施工していた場合、基準適合するまでにはハイブリッド工法によって基準適合まで要した期間と比較し、より長い期間を要した可能性が考えられる。

なお、ホットスポットにおけるcis-1,2-DCEの濃度変化から勘案すると、ハイブリッド工法においてフェントン反応が起きているにもかかわらず、施工後14日目という非常に早い時期から微生物による脱塩素化が起きていることが示唆された。このことは、筆者らが過去に行ったハイブリッド工法の事例においても同様の傾向が見られた2)

3.2 ホットスポットにおけるVOCs以外の水質パラメータ

表1にpH、溶存酸素濃度(DO)、水温、酸化還元電位(ORP)、Dehalococcoides属細菌(16SrRNAを標的としたリアルタイムPCR法)のデータを示す。

表1から、本サイトはハイブリッド工法施工後3日目にはわずかにDOが残っており、フェントン反応の痕跡がみられるものの、14日目においてはDOは検出下限値未満、ORP-442mVと非常に低い値となり、施工後わずか2週間で強い嫌気環境となっていることが確認された。この非常にすみやかな嫌気環境への移行は筆者らが過去におこなったハイブリッド工法の施工事例と同様であった3)。原因として、①土壌に含まれていた有機物等が化学酸化で溶けだすことで、バイオレメディエーション促進剤単独使用以上の効果が得られた2)、②フェントン反応により酸素が過剰に供給された環境下において、易分解性の有機物であるバイオレメディエーション促進剤が大量に投入されたことで、好気的な微生物が活性化され、有機物や酸素等の消費が急激に起きた、③水温の上昇で微生物の活性が上がった等が考えられた。

なお、水温の上昇が確認されているが、この現象も過去の事例と同様であった2)。原因として、①フェントン反応による熱の発生の影響、②微生物の急激な活性化による代謝熱の影響が考えられる(施工直前の近縁井戸では18℃前後であった)。

また、16SrRNAを標的としたリアルタイムPCR法によりDehalococcoides属細菌を定量した。表1に結果を示す。その結果、ハイブリッド工法においてフェントン反応を行っているにも関わらず、Dehalococcoides属細菌は施工後30日目で既に十分検出できるレベルで存在しており、施工後60日目においては、その数をさらに増やしていた。このことから、本案件におけるハイブリッド工法の施工により、Dehalococcoides属細菌は完全に死滅することなく、施工後に増殖していることが示唆された。しかしながら、施工前後のデータが無いことから、バックグラウンドでどの程度存在し、ハイブリッド工法でどこまで減少するかは、確認できなかった。今後は詳細なデータ取得により確認していきたい。

4.まとめ

フェントン反応と嫌気バイオレメディエーションの複合工法は、適切な薬剤選択や施工方法により、有効な原位置浄化の工法となりえることがさらに確実なものとなった。化学酸化とバイオレメディエーションの短所を補い合うだけでなく、お互いの長所を活かし、相乗効果によって、原位置浄化にとって難易度の高い高濃度汚染やホットスポットの施工をより確実にクリアしていくことができると考えられる。このことは、土壌汚染という負の遺産を清算するのに必要な浄化工事のコストや期間を抑えることにつながり、土地の流動化に寄与することができる考えられる。

今後は、化学酸化後の微生物活性化の詳細なメカニズム等の解明を進め、化学酸化とバイオレメディエーションの相乗効果をより高めていくことを考えている。

[参考文献等]

1)

大澤武彦 (2010):第三世代の原位置化学酸化技術, 環境浄化技術, Vol.9 No.9:P33-37

2)

小松大祐、小川えみ (2014):原位置化学酸化(フェントン反応)とバイオレメディエーションの複合工法とその施工事例, 第20 回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, S4-08, 2014

3)

Nora BS, Grotenhuis JC, Langenhoff AL, Rijnaarts HM. (2011):Efforts to improve coupled in situ chemical oxidation with bioremediation: a review of optimization strategies, J Soils Sediments, 11:129–140

研究集会でのQ&A

フェントン工法は酸性環境にすると思うが微生物への影響は大丈夫ですか?
弊社で使用するフェントン反応剤は中性域でも分解が可能なものであるため、問題ありません。また、事前に試験等を実施し、その後の微生物によるテトラクロロエチレン等の脱塩素分解の阻害要因となるような薬剤は、必要最低限にするようフェントン法の薬剤配合についても工夫しています。
この工法は、土質による影響はありますか?
どのような工法でもそうですが、土質による影響はあります。例えば、塩素化VOCsを分解するデハロコッコイデス属細菌がいない地層やフェントン反応による分解が困難なアルカリ性の土質を示す地層では困難であると言えます。必要に応じて適用性試験を行い採用する工法について判断しています。
また、上記のような土質を対象とした場合、弊社にて実施可能な他工法(過硫酸ソーダを用いた化学酸化工法、ガス吸引工法、地下水揚水工法等)の中から最適なものを選択(組み合わせ)しています。
微生物分解が進んでいると判断した証拠はありますか?
テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンの微生物による脱塩素分解では分解生成物としてシス-1,2-ジクロロエチレンや塩化ビニルモノマーが知られています。本サイトでは工事終了後の地下水モニタリングにて、これら分解生成物の生成が確認されました。また、デハロコッコイデス属細菌は塩素化VOCsの分解菌として広く知られていますが、同モニタリング期間中にはデハロコッコイデス属細菌の増殖が確認されました。上記から、塩素化VOCsの微生物分解が進んでいると判断しました。
フェントン反応剤を用いた場合、大量の酸素が生成され、嫌気環境に移行させるのは難しいはずなのに、何故こんなに嫌気になるのが早いのですか?
①フェントン反応により、地盤中の難分解性有機物やフェントン反応剤に含まれる有機系キレート剤を含む有機物が化学分解され、微生物にとって利用しやすい炭素数の小さな有機酸等が生成されること、②フェントン反応により発熱が起こり、土壌・地下水中の温度があがること、以上2つの要因から好気性細菌が活性化され、フェントン反応で発生した大量の酸素を瞬間的に消費した結果、速やかに嫌気環境に移行していると考えています。
フェントン反応剤が微生物の活性化剤として使えるのでは?
現状では情報が少なく何とも言えない状況です。ただし可能性はあるため、今後検討の余地はあります。
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