土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

原位置浄化による油分解微生物量の変化と最大分解能力の検討

(著作者)
  • 打木弘一1
  • 西島正範1
  • 田村正嗣1
  • 原 学1
  • 宋 德君2
  • 伊藤恵輔1
  • 1基礎地盤コンサルタンツ株式会社
  • 2株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

バイオレメディエーションによる浄化は、浄化の進行に伴う対象物質の土壌及び地下水のモニタリングだけでなく、分解微生物のモニタリングを継続的に行うことにより、微生物量及び地下環境の変化に応じた適切な現場対応が浄化の進行に大きく影響する。

一般的に分解微生物のモニタリングは、総菌数調査及び遺伝子解析等で行うが、総菌数調査では分解微生物の分離はできず、遺伝子解析では特定の分解微生物を定量することはできても、分解微生物群集として定量することは労力が大きく現実的でない。微生物のキノンプロファイル法によるキノン分析は、分解微生物群集のキノン種がわかれば、推定される分解微生物の有無を把握することができ、キノン量を定量することにより遺伝子解析の定量から比べると精度は低いものの、手軽に分解微生物の量の変化も把握することができる。

今回、バイオスティミュレーションによる油含有土壌・地下水の浄化サイトにおいて、浄化の進行に伴う原位置油分解微生物のモニタリングを行った。微生物のモニタリングは、浄化の進行に伴い土壌のキノンプロファイル法によるキノン分析を行い、キノン量を定量した。キノン種ごとのキノン量を油分解微生物量と読み替え、浄化の進行に伴う変化について検討したので、その結果を報告する。

2.浄化サイトの状況

浄化サイトは、海岸低地の旧海浜沿いの標高約2.0 mの平坦地で、西方向海側へ約500 mは埋立地になっていて、東方向山側へ約250 mには河川がある。地質は、深度-5.00 mまでは一部にシルトの薄層を挟む砂地盤の沖積層で、地表部は厚さ約0.5~1.0 mの礫混じり砂質土で造成されている。地下水位は、GL.-2.5 ~-3.5 m付近にある。

浄化対象範囲は、Ⅰ工区が約500 ㎡、隣接するⅡ工区が約250 ㎡であり、それぞれ油分の漏えい箇所及び時期が異なる。Ⅰ工区は、2012年10月頃に地上タンクからつながる地中埋設配管の老朽化により灯油が地盤への流出がわかった。Ⅱ工区の灯油の流出は、Ⅰ工区の調査で新たに見つかったもので、別の地下タンクからつながる地中埋設配管の老朽化により、灯油が地盤に流出していたことがわかり、流出時期は不明である。灯油の流出量は、最大1,900 Lと推定されている。

浄化対象深度は、Ⅰ工区は地下水位付近から下の深度2.5 ~3.2 mにあり、Ⅱ工区は地下水位を中間に深度2.0 ~3.5 mであり、Ⅱ工区はⅠ工区に比べ浄化対象厚さが厚い。土壌油分(TPH)は、最大49,860 mg/kgで、地下水の油分(TPH)は、1,232 mg/Lであった。

また地下水の下流側にあたる敷地境界には、拡散防止のための遮水矢板が施工され、地下水の流れが東向きから北向きに変わった。

3.浄化方法

浄化工法はバイオスティミュレーション工法で、図-1に示すように揚水した地下水の油膜を除去し、油分ナノ分解微生物栄養剤の溶液を添加したナノバブル水を地中に注入し、原位置の油分解微生物を活性化させ油分を分解・浄化する方法で実施した。

浄化効果を確認するためにⅠ工区には、管理孔1及び管理孔2を設置し、Ⅱ工区には管理孔3及び管理孔4を設置したほか、最大油分濃度が確認された観測井戸7もモニタリング孔とした。 不飽和帯は、地表部から、油分ナノ分解微生物栄養剤の溶液を添加したナノバブル水を地表部注入孔及びトレンチから自然浸透させた。浄化期間は、10 ヶ月間で、土壌油分(TPH)は、最大120 mg/kgで、地下水の油分(TPH)は、1.3 mg/Lまで低下した。

4.油分解微生物のキノン種とキノン量の深度分布

油分解微生物のキノン種を表-1に示す。一般的にユビキノンは好気性微生物で、メナキノンは嫌気性微生物である。

油分解微生物は、ユビキノンで4 種、メナキノンで5 種が確認されている。6)

浄化開始前の深度方向の油分濃度及びキノン量は、表-2及び図-2に示すように特定の深度で土壌油分(TPH)及び油分解キノン量が増加しており、この深度付近には地下水位があり、油分(TPH)濃度も高い傾向にある。

油分解微生物のキノン量の増加する深度のキノン種は、図-3に示すように油分解微生物のキノン種Q-n9、Q-n10、MK-n7、MK-n8(H2)、MK-n8(H4)、MK-n9及びMK-n9(H2)が存在することがわかった。地下水面付近の油汚染土壌では、好気性菌の保有するQ-n9、Q-n10及びMK-n7、MK-n8、MK-n9、MK-9H2等の油分解菌保有キノン種が優占種であった。

5.油分解微生物群のキノン量の変化

浄化開始は、6 月初旬から開始し、土壌油分のモニタリングは、11 月までは2 ヶ月に1 回の頻度で、11 月以降は1 ヶ月に1 回の頻度で実施し、地下水の油分のモニタリングは、1 ヶ月に1 回の頻度で実施した。

土壌油分(TPH)及び油分解微生物のモニタリングは、管理孔等を中心に約0.5m程度の離れた四方でボーリングまたはハンドオーガーで土壌試料を採取した。採取深度は、浄化開始前の管理孔設置時に深度方向調査で最も土壌油分濃度の高い深度付近で、油臭が強い土壌試料を採取した。

油分解微生物群のキノン種ごとのキノン量は、表-3 及び図-5 に示すように、浄化開始後の土壌油分濃度の増減の繰り返しは、管理孔周辺の土壌油分の不均質を示すものと思われるが、浄化期間の経過に伴い土壌油分濃度は低下し、浄化開始前には最大49,680 mg/kgあった土壌油分(TPH)が浄化開始後約8 ヶ月後には最大120 mg/kgまで低下した。

油分解微生物群のキノン量は、浄化開始後、しだいに増加しピークに達すると土壌油分の低下とともに減少する傾向にある。

また油分解微生物のキノン種別にキノン量の変化を比較すると浄化開始後にユビキノンQ-8 の増加が顕著に認められ、主にユビキノンQ-8 を保有するAcinetobacter属の増殖が土壌油分の低下に貢献したものと考えられる。

ユビキノンQ-8のキノン量は、管理孔3では概ね3ヶ月後、管理孔4 では概ね2 ヶ月後、観測井戸7 では概ね1 ヶ月後に増加のピークが来ており、管理孔4 及び観測井戸7 は油分解微生物のキノン量の増加に伴い、土壌油分は顕著に低下した。

土壌油分と油分解微生物量との関係は、図-4 に示すように全体的には土壌油分TPHが大きいと油分解微生物のキノン量も多い傾向にあり、油分濃度が高い土壌に油分解微生物が多く生息していることがわかる。浄化が進行している期間では、線形近似線は同じような傾きを持っていることから、土壌油分濃度に応じて油分解微生物の生息量が制限されていることが予想され、その生息量は油分解微生物のキノン量に置き換えると最大2.0 μmol/kg程度と考えられる。

これらのことから最大キノン量になるように油分解微生物を増殖させるための現場管理が効率的で効果的な浄化につながるものと考えられる。

6.まとめ

土壌・地下水の油分浄化サイトで、油分解微生物群のキノン種とキノン量の変化から、同サイトでの油分解微生物群の最大分解能力がキノン量で評価できる可能性があることがわかった。 バイオレメディエーションによる土壌地下水浄化は、分解微生物の活性化を簡易な方法でモニタリングしていくことが重要である。

分解微生物のキノン分析によるモニタリングは、微生物群集の変化がわかり、キノン量を微生物量に置き換えることにより、分解能力を推定できる有効な手法と考えられ、多くの浄化サイトで事例を収集し、バイオレメディエーションでの有効な微生物管理手法に活かしたい。

【参考文献】

1)

Katayama A, Fujie K (2000): Characterization of soil microbiota with quinone profile. In: Bollag JM, Stotzky G (eds) Soil Biochemistry. Vol. 10. Marcel Dekker, New York, pp303-347.

2)

片山新太(2000):土壌中の農薬分解に関与する微生物群の構造と挙動,日本農薬学会誌, 25, pp300-309

3)

Song, D., and Katayama, A .(2005): Monitoring microbial community in a subsurface soil contaminated with hydrocarbons by quinone profile. Chemosphere, 59(3), pp. 305-314

4)

Song, D., and Katayama, A. (2010): Approach for Estimating Microbial Growth and the Biodegradation of Hydrocarbon Contaminants in Subsoil Based on Field Measurements: 1. Model Development and Verification, Environ. Sci. Technol. 44, pp767.773

5)

Song, D., Kitamura, M. and Katayama, A. (2010): Approach for Estimating Microbial Growth and the Biodegradation of Hydrocarbon Contaminants in Subsoil Based on Field Measurements: 2. Application in a Field Lysimeter Experiment, Environ. Sci. Technol. 44, pp6795.6801

6)

宋德君・田村和嗣・打木弘一・原学・西島正範(2012): 栄養塩注入に伴う油汚染サイトの微生物分解容量の変化, 第18回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 講演集,pp529~532

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