土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

フェントン反応剤を用いた原位置土壌洗浄浄化の施工事例

(著作者)
  • 中間哲志
  • 和知 剛
  • 大澤武彦
  • 尾崎和宏
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

ガソリンスタンドにおける浄化対策工事は、平成22年6月の地下貯蔵タンクに関する消防法の改正(施行期日平成23年2月1日から経過措置平成25年1月31日まで)により廃止される給油所の増加や油の漏洩事故の発生により、やや増加傾向にあると推察される。更に昨年に発生した東日本大震災が原因で発生した汚染は、漏洩した油の量が多いケースや様々な種類の鉱油が混ざり合ったりしているケースが見られる。このため、単独工法による浄化対策から、工法を組み合わせた複合型の浄化対策が必要になってきている。筆者らは、これまで掘削除去に頼ることなく様々なオンサイトの浄化工法を採用して営業中の給油所や廃止後の給油所跡地で浄化の実績を数多く上げてきた。しかし、最近、これまであまりオンサイト浄化の対象にならなかった廃油やエンジンオイル、重油といった重質油による汚染のサイトへの掘削除去以外の工法での対応を求められるようになった。これらの油は、化学酸化剤での分解が困難で、バイオレメディエーションなどの工法では浄化期間に長期を要するなどの問題があり、掘削除去を行ったケースもある。しかし、掘削除去は近隣からの苦情、高い工事費用など従来から抱える課題があり、原位置での土壌洗浄をこれらの油種の汚染の浄化に適用することとした。油の原位置土壌洗浄(ソイルフラッシングともいう)は海外では実績が報告されているものの、国内での報告事例は少ない。そこで筆者らは、化学酸化剤(フェントン反応剤)を用いることで洗浄効果を増した原位置洗浄工法により浄化することとした。

本報告は、原位置土壌洗浄の事前の検討および試験の結果、および施工事例を報告するものである。

2.洗浄剤としてのフェントン反応剤

化学酸化法の1つであるフェントン反応剤を用いた浄化方法は、原位置へのフェントン反応剤の注入を中心に浄化工法として採用実績が増えている。筆者らは、このフェントン反応剤による土粒子から油を剥離させる効果に着目して、フェントン反応剤を用いた原位置注入と揚水を組み合わせることにより、土壌からの油の除去を効率よく行えると考えた。表1、図1に室内試験におけるフェントン反応剤と水を用いた洗浄後の土壌に残存するTPH濃度および残存率を示す。同図によると、フェントン反応剤による土壌からの油分濃度(TPH)の土壌への残存率は水と比較して概ね15~20%減少していることが伺え、フェントン反応剤による洗浄効果の向上が期待できた。

表1 フェントン反応剤と水を用いた洗浄後の土壌に残存するTPH濃度および残存率
  フェントン反応剤洗浄 水洗浄
TPHM
(mg/kg)
残存率
(%)
TPHM
(mg/kg)
残存率
(%)
洗浄前 164 100 164 100
洗浄1回 107 65 117 71
洗浄2回 54 33 72 44
洗浄3回 24 15 48 29
洗浄4回 24 15 39 24

3.事前試験

原位置での土壌洗浄を行うにあたり、工法の適用への妥当性を検討する目的で事前試験を行った。事前試験での確認項目は、

  • (1)敷地内の地下水の流向、流速の確認

  • (2)注入方法および間隔の検証(洗浄半径の確認)

である。本工法では、土に付着した油を剥がし、土粒子間を移動させ、井戸にて油を回収する一連の洗浄作業を原位置で行う。つまり、本工法を適用するサイトは、効率良く油分を回収するために透水係数がある程度大きいことが要求される。このため、敷地外へのフェントン反応剤の拡散も懸念されたことから、事前試験において敷地外への拡散がないことを確認する必要もあった。事前試験は浄化対策が計画されていた敷地の一角(油汚染がない場所)で実施された。事前試験の結果を以下に示す。

(a)地下水の流向

観測井戸を用いて浄化対象サイトの地下水位のコンターを求めると、南東側から北東側に向かって傾斜していることが分かった(図2)。浄化対象エリアから敷地外へ薬剤や洗浄後の油の拡散のおそれがあることから、浄化対策時には原位置洗浄の揚水井戸の他に拡散防止対策用の揚水井戸と敷地境界の監視井戸の設置が必要であると結論づけられた。

(b) 地下水の流速

簡易透水試験(スラグテスト)の結果、主に浄化の対象となるGL-3.5~4.0m付近での地下水の流速は4.4m/日であることが分かった。フェントン反応剤の反応が概ね24時間で完了することを考慮すると、敷地外へのフェントン反応剤の拡散の可能性は十分に予想され、拡散防止対策用の揚水井戸を密に配置する必要があることが結論づけられた。一方で、一定の流速が確保できることから、揚水による油の回収効果も十分に期待できることが分かった。

(c) 注入方法および間隔の検証(洗浄範囲の確認)

注入する浄化剤の拡散状態を確認するために、注入地点(1地点)からクエン酸ナトリウムを毎分1.0~2.0ℓで注入し、注入地点近傍の8地点においてECプローブ1)を用いた土壌の電気伝導度の測定を行なって注入したクエン酸ナトリウムの拡散をモニタリングした。

図3に注入地点では、GL-3~4m付近で電気伝導度の上昇が確認され、注入地点から1m離れた2地点において同深度で上昇が確認された。しかし、注入地点から2m離れた測定地点では、影響が確認されなかった。注入試験の結果、指向性があることが分かった。これらの結果から注入ピッチを1mおきに設定し、揚水井戸も配置間隔を短くし、効率よくフェントン反応剤により洗浄された油分を回収する必要があと判定した。

4.原位置洗浄の施工とその結果

4.1 原位置土壌洗浄適用の背景

土壌洗浄の施工の対象となったサイトは、軽油、廃油、エンジンオイルを主体とする油種で汚染されており、汚染の除去を目的とした浄化工法が検討される中で、化学酸化剤による分解は困難と判断された。また、このサイトの周囲は閑静な住宅街になっており、周辺は住宅が近接していて掘削除去による汚染の除去も困難と判断された。原位置土壌洗浄は、このような汚染や周辺状況を背景として、適用することとなった。

原位置注入と揚水を組み合わせたオンサイト措置である原位置洗浄は、掘削除去や重機を用いるオンサイト措置と比較して、振動や騒音などの周辺環境に与える影響がきわめて少なく、周辺の住民の理解を得られやすい工法であった。一方、このサイトの周辺には利水用の浅い井戸(5m~6m)が点在しており、原位置土壌洗浄を行うにあたり地下水の水質の監視が求められた。

4.2 原位置土壌洗浄の方法

ここで報告する原位置土壌洗浄は、フェントン反応剤(過酸化水素濃度1.0%に硫酸第一鉄、クエン酸ナトリウムを混同したキレートフェントン液2))を高圧噴射して原位置の土壌を洗浄すると同時に洗浄後の地下水を揚水回収し、地上に汲み上げられた油水を油水分離して濁水処理した後、再度洗浄水として利用する水を循環さる方法を採用した。原位置土壌洗浄の手順を以下に示す。また、原位置土壌洗浄のイメージを図4に示す。

  • (1)ケーシングを、所定の深度まで打ち込む。

  • (2)その後ケーシングを20cm程度引き上げる。

  • (3)高圧噴射ノズルが先端に取り付けてあるロッドをケーシングの中に入れる。

  • (4)ケーシングの先端部分においてケーシングに挿入した高圧噴射ノズルからフェントン反応剤を注入し、ケーシングの直下20cm部分の土壌を洗浄する。またこのときに浄化エリア内あるいは周辺に設けた回収井戸(ウェルポイント、2.0mピッチで設置)にてGL-2.8~3.5mの洗浄地下水を回収する。(洗浄時の引き上げ速度は毎分10cm程度)

  • (5)所定の深度が高圧洗浄されるまで(2)~(4)を繰り返す。

  • (6)予定量のフェントン反応剤を注入後は、ケーシング、ロッドを引き抜いて次の注入地点へ移動する。原位置土壌洗浄を行う注入地点の平面方向のピッチは1.0mピッチとしたが、特に油汚染の濃度が高いエリアは50cmピッチで洗浄を行った。

4.3 結果

原位置土壌洗浄の結果(洗浄前と洗浄後の土壌のTPH濃度の比較)を表2、表3に示す。浄化を行ったサイトはGL-1.5m~6.0mにかけて砂礫で構成されており、油による汚染は主にGL-2.0m~3.0mでみられた。表2は既存の調査結果(浄化前)と浄化後のモニタリングでTPHの値を比較したものであるが、洗浄前に1,400~15,000 mg/kgあったTPHは洗浄後に500mg/kg程度以下となったことがわかる。表3はほぼ同じ地点(浄化前と浄化後のサンプリング採取地点は20cmほど離れている)で試験的に洗浄直前、洗浄直後のTPHの濃度変化を調べた結果である。表2の結果と同様に油種によらず洗浄後はTPHの値が小さくなっていることがわかる。これらの結果から、土壌洗浄によって、土壌のTPHは低減し、土壌洗浄による浄化の効果があったといえる。

本対策では土壌洗浄の期間中、敷地の周辺に設置した監視井戸で、(1)地下水位、(2)pH、(3)電気伝導度、(4)鉄、(5)過酸化水素、の項目についてモニタリングを行った。監視井戸での地下水の測定結果を図5に(2)pH、(3)電気伝導度につき示す。フェントン反応剤による影響は地下水位、pH、電気伝導度、全鉄及び過酸化水素の測定結果から、当該敷地外への流出は無かったと判断した。

表2 洗浄前と洗浄後の土壌のTPH濃度の比較
表3 洗浄前と洗浄後の土壌のTPH濃度の比較(2)

5.おわりに

原位置土壌洗浄の事前の検討および試験、現場への適用を通じて、フェントン反応剤を用いた原位置土壌洗浄工法が油汚染土の浄化方法として有効であることが検証された。今回適用された現場に限らず、従来広く適用されていたオンサイト措置では分解等による除去が困難な油種による汚染や、周辺環境に与える影響が懸念される工法(掘削除去や鋼矢板設置による遮水工封じ込め等の工法)の適用が困難なサイト、汚染が深く容易に掘削除去が出来ないサイトなどはこれまでも存在し、今後も数多く顕在化するものと思われる。このようなサイトに対応できる工法の1つとしてフェントン反応剤を用いた原位置土壌洗浄工法を適用し、普及させていきたいと考えている。しかし、適用できると推察される土質は比較的透水係数の大きな砂層や砂礫層に限られる。

今後は適用対象土の範囲や適用可能なサイトを広げるべく、細砂やシルトを含む土壌など様々なサイトで試験施工を行うとともに、特にSSを対象とした洗浄水の処理方法や発生汚泥の処理方法の簡易なシステム化を図りたいと考えている。

[参考文献]

1)

小林裕一、他:ダイレクトプッシュテクノロジーによる原位置浄化施工のモニタリング, 第17回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, S6-18, 2011

2)

大澤武彦、他:クエン酸Na、鉄キレートを用いたフェントン法に関する実験的検討, 土壌環境センター技術ニュース, No.17, 2010.5

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