土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

油汚染の原位置浄化事例:希釈過酸化水素水を用いたバイオスティミュレーション

(著作者)
  • 畔津聖
  • 宮城盛
  • 安原雅子
  • 草場周作
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

ガソリンスタンド等における地上または地下施設からの漏洩等を契機とした土壌中の油汚染が顕在化し、法・条例に基づいた、または自主的な対策が進められている。油汚染除去の手法の一つとして、微生物による分解を利用するバイオレメディエーションが挙げられる。油に対するバイオレメディエーションは対象土壌に在来の微生物を活性化させる好気バイオスティミュレーションが一般的である。この場合、土中は酸素濃度の極めて低い嫌気環境にあるため、必要量の酸素を供給することが浄化目標達成のための最も重要な要因となる。

原位置バイオレメディエーションにおける酸素の供給方法として、酸素徐放出剤の注入、オゾンの注入、スパージング、エアレーションがある。これらについては数多くの施工例があり、本研究集会でも多くの事例が報告されてきた。他にも、酸素供給法として過酸化水素水を用いる手法があるが、国内では未だ一般的ではない。

過酸化水素は酸化力が強く、高濃度では生物に有害であるが、濃度0.05%以下に希釈すると無害化され3)、自己分解、鉄等の金属との反応、微生物の酵素(カタラーゼ)との反応から酸素を放出して好気性生分解を促進させる効果がある。この希釈過酸化水素水の酸素供給量は100~500mg/L であり1),2)、空気中から溶解させるために溶存酸素濃度が8-10mg/Lに制限されるスパージング等の工法と比較するとその供給力は非常に高い。

今回、筆者らは過酸化水素水を希釈することで得られる酸素供給水溶液(以降酸素リッチ水という)を用いたベンゼンによる地下水汚染の原位置バイオレメディエーションを行い、環境基準適合を確認したのでここに事例を紹介する。

2.サイトの概要

対象サイトはガソリンスタンド跡地の更地(敷地面積600m2)である。サイトの地質状況は、多賀層群の砂質泥岩を基盤として、下位より砂礫、粘性土、シルト質砂、粘性土、ローム、および埋め土から構成されている。なお、砂礫層は基質にシルトや粘性土の混入がみられ、含水比は28%だった。浄化工事前の調査では地下水中のベンゼン濃度は0.013~0.071mg/Lであり、ベンゼンの土壌溶出量は全地点で環境基準に適合していた。しかし、地下水とボーリングコアの観察から帯水層中(地下水位GL-4.0m付近)のGL-5.5m~7.0mの砂礫層に汚染源となったガソリンが局所的に存在し、地下水ベンゼン濃度はその影響を受けている可能性が推察された。

3.酸素リッチ水注入によるバイオレメディエーションの実施

3.1 酸素リッチ水注入量と注入期間

過酸化水素水(35%) 8,750kgは水道水で0.05%に希釈され11ヵ月にわたり自然浸透法で注入された(注入量:0.1L/min/注入井)。過酸化水素1molから酸素は0.5mol発生し、重量にすると過酸化水素1gから酸素が約0.47g発生する。設計量の過酸化水素水から得られる理論上の注入溶液中の酸素発生量は235mg/Lであり、供給された酸素総量は1,440kgである。注入液には適量の栄養塩も添加した。

注入地点およびモニタリング地点(M1~M5)の位置を示す概略図を図1に示す。注入地点は2m間隔で対象地全域に配置した。

3.2 注入設備

注入設備と注入井の仕様を図-2と図-3にそれぞれに示す。

4.施工の結果

効果を確認するためのモニタリングは、地下水中のベンゼン濃度、溶存酸素濃度、そして好気性微生物数によって行った。

注入開始後、M1~M4地点でベンゼン濃度の上昇が1~2ヶ月にわたってみられ、最も上昇幅が大きかったM3地点では施工前から19.2倍となった。この現象は過酸化水素水から発生する酸素の超微細気泡により油分の土壌粒子からの剥離効果によるものであると推察される。この間、好気性微生物数は施工前から176~3,611倍に増加しており(結果非表示)、好気性生分解が促進される条件への土中環境転換が示されたため、バイオレメディエーションは適切に進行していると判断された。地下水ベンゼン濃度のモニタリング結果を図-4に示す。

4ヶ月目以降、地下水ベンゼン濃度は全ての地点で緩やかな低減傾向を示し、6ヶ月後までにM2地点とM5地点で環境基準に適合した。その後は7ヶ月後以降にM1、M3、M4地点で急激な減少を呈し、8ヶ月後には全地点で環境基準適合となった。

この急激な変化は、該当する3地点で同時期に溶存酸素量の値が急上昇していることから、酸素が対象土中で広範に浸透したことが伺え、これに関係するものと推測される。M3地点でのモニタリングを代表例として図-5に示す。早期に基準適合に至ったM2地点とM5地点では上記3地点とは対象的に注入後から溶存酸素濃度は高い値が得られていた(表-1)。これら3地点で7ヶ月間酸素濃度の上昇が見られなかった理由は明らかではないが、供給される酸素が注入ポイント近傍で消費されやすく、モニタリング地点に到達していなかったことが考えられる。

注入8ヶ月後の基準適合後も濃度の再上昇を懸念し3ヵ月間、注入とモニタリングを継続し、基準適合の維持を確認した。開始から11ヶ月後に注入を停止し、以後もモニタリングを続けているが、停止後11ヶ月が経過した現在(2011年3月現在)も全地点で基準適合を維持している。酸素濃度は0.1mg/L未満となっており、好気性微生物分解は生じていないと考えられるため、ベンゼン汚染の浄化は適切に行われたものと評価された。

5. おわりに

過酸化水素水を希釈することで得られる酸素リッチ水による原位置バイオレメディエーションは基準適合に至り、その浄化効果が確認された。本工法では期間が11ヵ月、費用は30,000円/m3と、浄化達成までの期間と経済性においては一般的なバイオレメディエーションと同等であるが、施工を通して過酸化水素水の性質から副次的なメリットを効率性と施工性に備えていることが判明した。それらの特長を表-2にまとめる。

表-2 希釈過酸化水素水を用いる効率性・施工性のメリット
効率性 (1)気体中の酸素を溶解させる工法よりも容易かつ効率的に高濃度酸素水を作れる
(2)気泡が上昇しやすいスパージングよりも水平方向に浸透しやすい
施工性 (1)薬剤である過酸化水素水が安価で、量の確保と迅速な調達が可能である
(2)スパージングの様にコンプレッサー制御が不要でオペレーションが簡便である
(3)広範囲にわたり多地点同時注入ができ、適時注入箇所と注入量を容易に変更・集中できる

今後は本手法の改良に向けて取り組みを行っていく。まず、本事例ではすべての地点でベンゼン濃度が基準適合に至るまで8ヵ月を要したが、この期間はより効率的な酸素リッチ水の浸透によって短縮できると考えられ、注入地点の増設・地点間隔の縮小やリン酸塩等で安定化させた過酸化水素水の利用を検討している。

さらに3)発生する酸素ガスが不飽和帯に拡散することが知られていることから、これを利用して飽和層と飽和層に接している不飽和層との同時対策も可能であると筆者らは見ている。不飽和層に対する原位置(In Situ)バイオレメディエーションは現在バイオベンティングが主流であるが、地下水位の高い条件では不飽和帯のみが汚染されていることは稀であり、酸素リッチ水の利用により両環境を同時に処理できれば、浄化対策の簡略化と効率化を進められるはずである。

参考文献

1)

Britton L. N. (1985):Feasibility Studies on the Use of Hydrogen Peroxide to Enhance Microbial Degradation of Gasoline, American Petroleum Institute.

2)

Brown R. A. and Norris, R. D. (1986): Field Demonstration of Enhanced Bioreclamation, The 6th National Symposium and Exposition on Aquifer Restoration and Ground Water Monitoring, pp. 438-456.

3)

Huling, S. G. and Bledsoe, B. E. (1990):Enhanced bioremediation utilizing hydrogen peroxide as a supplemental source of oxygen: a laboratory and field study, U.S.EPA document

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