土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

ダイレクトプッシュテクノロジーの世界的動向

(著作者)
  • 佐藤秀之1
  • 横溝透修1
  • 山内仁2
  • 安原雅子2
  • 小林裕一2
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2株式会社ランドコンシェルジュ

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1.はじめに

ダイレクトプッシュテクノロジー(Direct Push Technologies)(以下「DPT」と呼ぶ)は”Direct Drive”、”Drive Point”または単に”Push”とも呼ばれ、表層調査において押し込み、打撃、またはバイブレーションを用いてロッドを土中に押し込む技術の総称である1)2)。従来の土壌試料の採取や、井戸を設置した上での地下水試料の採取に比べて、DPTはロッドの先端に試料採取用のツールを取り付けることによって、土壌、土壌ガス、地下水等目的に合わせて試料を採取することが可能である。さらに、各種薬剤の注入、ガス吸引、エアスパージングにも用いられる。また、ロッドの先端に特殊なプローブを取り付けることによって、原位置でのデータの取得(地層や汚染物質の分布の把握など)が可能である。DPTは、1980年代中頃から汚染サイトを評価する需要が高まったことを背景に、米国を中心に成長と発展を遂げて来た。特に特殊なプローブを用いた技術は、ダイレクトセンシング技術とも呼ばれ、1990年代から米国を中心に発展をとげ、我が国でもいくつかの使用例が報告されている3)4)5)6)。本報では、その需要と発展が著しい米国を中心に、DPTの動向について紹介する。

2.DPTについて

DPTの歴史は、1930年代にオランダで開発され、1950年代に実用化されたオランダ式二重管コーン貫入試験機(いわゆる「ダッチコーン(Dutch Cone)」)まで遡る7)8)。ダッチコーンは電気式静的コーン貫入試験(図-1、以下「CPT(Cone Penetration Test)」と呼ぶ)技術の先駆けで、円錐状のコーンを地盤中に貫入させ、深度と貫入抵抗を測定し、地盤の強度などを求めるシステムである。その後、欧州を中心にCPTの開発が進むが、1980年と1986年のスーパーファンド法に代表される土壌・地下水汚染に関連する規制の強化に伴い、米国を中心にDPTは急速な発展を遂げた。特に1988年に米国環境保護庁(USEPA)向けに開発された土壌ガスサンプラーの出現により、土壌や地下水を採取するためのツールス(図-2,3)や、それに使用する貫入装置の開発が、汚染サイトの評価を行う需要の増加に合わせて進められた1)

3.DPTの活用状況

地盤汚染調査におけるDPTの活用は、欧米を中心に進んでいる。その中でも特に米国では、Triadアプローチ9)10)の適用や、浄化を目的としたより詳細な地質構造や汚染状況を確認する需要の高まりから、ダイレクトセンシング技術を併用した手法が取り入れられて来た。

3.1 ダイレクトセンシング技術

近年の動向として、広範囲の調査時のスクリーニングや、地質特性の詳細な把握のために、DPTの中でもダイレクトセンシング技術が調査や浄化に先行して行われる傾向がある。米国では1990年代から土壌試料を採取することなく原位置で汚染状況を調査するダイレクトセンシング技術の開発や、それらを用いた手法による汚染領域の把握調査が積極的に行われてきた。ダイレクトセンシング技術は、ロッドの先端に取り付けた特殊なプローブを用い、それらを所定の深度まで貫入する間に、深度方向に対する鉱物油やVOCs(揮発性有機化合物)の汚染、地盤の特性の違い等を探査するためのシステムである(図-4)。また、米国材料試験協会(ASTM)によって地盤汚染調査のためのダイレクトセンシング技術の規格化も進められており、地盤汚染調査にダイレクトセンシング技術を用いる場合のロッドの洗浄と調査孔閉鎖に関するガイド(ASTM D6067-96)、窒素レーザー誘導蛍光センサー(LIF: Laser-Induced Fluorescence)を用いた石油汚染サイトのダイレクトセンシング技術による調査のための技法(ASTM D6187-97)および膜界面プローブ(MIP: Membrane Interface Probe)を用いた揮発性汚染物質の検知のための技法(ASTM D7352-07)が規格化されている9)。表-1にダイレクトセンシング技術に用いられる特殊プローブシステムの例を示す。

表-1 主なダイレクトセンシング技術に用いられる特殊プローブシステム9)10)

3.2 ダイレクトセンシング技術の活用

不十分なサイトの評価や、過度なモデル化などによる、汚染状況や地質構造の読み間違いによる浄化の失敗や、施工後の大規模な設計変更を防ぐために、表-1に示したMIP、LIF、HPT、ECプローブのようなダイレクトセンシング技術を用いたサイトの特性評価を実施する流れがある10)11)12)。特に浄化技術を適用する前に、細かな透水性の違い、吸着や溶解の状態、油相(フリーフェーズ)や気相の状態等を含むサイト全体の特性を評価することの必要性は、プロジェクトの成功に重要な意味を持つとしている10) 。また、透水性の詳細な把握については、汚染物質の移動が帯水層の透水性構造によって大部分がコントロールされるという認識に基づいている11)。さらに、効果的な浄化を進めるためには、浄化適用前に加えて、浄化中の汚染物質の減少や薬剤等の注入による汚染物質の移動の把握、浄化後の徹底した評価が必要であるとされている。それらを踏まえ、サイトの特性評価を実施するために、ダイレクトセンシング技術が積極的に適用されている。

ダイレクトセンシング技術を用いて鉛直方向の地質特性や汚染状況を連続的に取得(例えばMIPやECは1.5cmに1回データを取得)することで、詳細な状況を把握することが可能である。それらの鉛直プロファイルを元に二次元(2D)、または三次元(3D)によりデータを可視化することは、サイト全体の状況を把握するための有効なツールとなっている(図-5,6)。また、ダイレクトセンシング技術は鉛直方向の連続データを取得するが、水平方向のデータの精度を上げるためにはメッシュを狭める必要がある。それを補填する方法として、地上での電気探査とECプローブを併用した事例がある12)。これにより鉛直方向と水平方向の精度の高い調査を行い、サイト概念モデルの構築や、原位置浄化プログラムの成功につながる可能性が期待できるとしている。

3.3 ダイレクトセンシング技術の応用

特異な例として、水銀汚染サイトにおける調査にMIPを用いた報告がある13)14)。水銀は常温で液体である唯一の金属で揮発性が高い。更に経気吸入により人体に入ると毒性を発現する。そこで、汚染サイトでの作業員の曝露を防ぐために、直接水銀に触れる可能性が低いダイレクトセンシング技術の有効性が検証された。MIPは通常検出器としてPID(光イオン化検出器/Photo Ionization Detector)、FID(水素炎イオン化検出器/Flame Ionization Detector)、XSD(ハロゲン選択型検出器/Halogen Specific Detector)等が用いられるが、水銀用として、Lumex 社製の「RA-915+」とShawcity社製の「AMI(Autozeroing Mercury Instrument)」が使用された。

また、近年米国ではTriadアプローチに基づいた調査において、DPT、特にダイレクトセンシング技術を用いた調査事例が報告されている15)16)17)。Triadアプローチとは、費用と時間を有効に使うことを目指し、より信頼できかつ説得力のある調査や修復方法を決めるための方法論である18)19)。Triadアプローチを用いた原位置調査の事例として、TCE汚染源の確認に用いられた例がある15)。CSM(Conceptual Site Model/サイト概念モデル)によって、TCEや他のVOCsの汚染源が汚水処理システムであると特定され、さらにその汚水処理施設は、他の汚染の潜在的な汚染源となりえることも予想された。これらを検証する際に、SCAPS、CPT、MIPを用いている。岩層中の移動経路等の地質特性の確認と汚染状況のスクリーニングを行うことによって、分析機関による分析を最適化し、モニタリング井戸の設置や試料採取を行う位置の選定に役立てている。これにより、サイトの特性とリスクアセスメントの決定に関する不確定要素を減らし、コスト削減を成し遂げたとある。

4.おわりに

我が国では、2000年代より本格的に欧米のダイレクトセンシング技術が導入され、いくつかの適用事例が報告されている3)4)5)6)。また、2006年に環境省が公表した「油汚染ガイドライン」では、ダイレクトセンシング技術の中で、蛍光センサー法、膜界面サンプリング分析法、リボンNAPLサンプラー法(RNS法)がTPH(全石油系炭化水素)濃度を測定する簡易測定法として示されている。しかし、我が国ではスクリーニング調査という概念が根付いていないため、必ずしもダイレクトセンシング技術が地盤汚染や地質調査の方法として一般化しているとは言えない。さらに法に基づいた調査の場合、グリッド分けした調査方法を行った上でダイレクトセンシングを行うための費用と時間を捻出する必要があり、適用事例が伸び悩む要因となっている。しかし、2010年に施行された改正土壌汚染対策法では、掘削除去からより経済性が高く環境負荷の低い原位置浄化へのシフトを誘導している。原位置浄化を成功させるためには、浄化適用前から終了まで一貫して汚染状況を正確に把握する必要性が求められる。そこで、ダイレクトセンシング技術をうまく活用し調査精度を増すことによって、不確実な部分や公定法による分析結果を補完し、効率的により精度の高い汚染状況の把握を行うことが期待出来る。また、原位置でリアルタイムでデータを得られる利点を活かし、設計変更等のサイトにおける意思決定に有効利用することが可能である。

【参考文献】

1)

Expedited Site Assessment Tools For Underground Storage Tank Sites: A Guide for Regulator, EPA 510-B-97-001, The Office of Underground Storage Tanks., Chapter V: Direct Push Technologies, p.V-1.(http://www.epa.gov/swerust1/pubs/esa-ch5.pdf)

2)

Groundwater Sampling and Monitoring with Direct Push Technologies, EPA 540/R-04/005, p.1.(http://www.clu-in.org/download/char/540r04005.pdf)

3)

高木一成・深田園子(2006): ダイレクトセンシング技術を使用した油汚染の分布調査,土と基礎,Vol.54,No.5,pp.19~21.

4)

安原雅子・山内仁・中間哲志・今村幸則・田中正利・佐藤秀之(2006): 膜界面サンプリング分析法によるベンゼン・油汚染地の評価と原位置浄化設計への適用,第12回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S1-7 pp.32~35.

5)

吉村雅仁・菊地達也・山野賢一(2006): 原位置センシング技術を用いた浄化確認精度の向上,第12回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S5-5 pp.630~633.

6)

光畑裕司・安藤大・上田匠・今里武彦・高木一成・佐藤秀之(2009): 電磁マッピング物理探査技術の油汚染土壌調査への適用研究,第15回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S5-26 pp.650~655.

7)

T. Lunne, P.K. Robertson and J.J.M. Powell: Cone Penetration Testing in Geotechnical Practice, Blackie Academic & Professional. London.

8)

P.K. Robertson and K.L. Cabal (Robertson) (2008): Guide to Cone Penetration Testing for Geo-Environmental Engineering, Gregg Drilling & Testing, Inc., 2nd Edition.

9)

中島誠(2009): CPTの地盤環境分野への展開,特集 最新のCPTテクノロジー,地盤工学会誌 Vol.57 No.8 Ser.No.619, pp.12~15.

10)

John H. Sohl III., 2011. High-Resolution/3D Site Characterization Approaches and Technologies: Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

11)

Nicklaus R. H. Welty, Eric R. Killenbeck, Joseph A. Quinnan (2011): Facies Analysis and Remediation Hydrogeology, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

12)

Raghu Suribhatla, Peter Bennett, Murray Einarson and John Luttinger (2011): Integration of Surface Electrical Resistivity Data and Direct-Push Soil Conductivity Data for High-Resolution Imaging of the Subsurface, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

13)

William M. Davis, Dennis G. Jackson, Carol A. Eddy-Dilek and Brian B. Looney (2011): Use of Membrane Interface Probe for the Characterization of Elemental Mercury, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

14)

Dennis G. Jackson, Carol A. Eddy-Dilek, Brian B. Looney and William M. Davis (2011): Direct-Push Technologies for the Characterization of Elemental Mercury, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

15)

Timothy Shields, Shane DeGross, Julie Crosby and William M. Davis (2011): Successful Triad Implement and Use of MBT in Remediation Strategies, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

16)

Todd R. Kincaid, Kevin E. Day and Roger Lamb (2009): 3D Solids & Parameter Modeling To Facilitate TRIAD-Compliant Rapid Site Characterization, Conference Paper, 23th Central Pennsylvania Geotechnical Conference. (http://geohydros.com/images/Pubs/geohydros_3d_modeling_triad_ASCE_Nov-2009.pdf)

17)

Jesse Wright, Rod Thompson, George Losonsky and William M. Davis (2011): High-Resolution Characterization of PCE Source, Plume, Sub-Slab Vapor and Indoor Air in a Single Deployment at a Manufacturing Facility, Conference Platform Paper, The 2011 North American Environmental Field Conference & Exposition.

18)

Deanna M. Crumbling (2004): Summary of the Triad Approach, White Paper, U.S. Environmental Protection Agency, Office of Superfund Remediation and Technology Innovation, US EPA, Washington DC. (http://www.triadcentral.org/ref/doc/triadsummary.pdf)

19)

坂野且典・中村直器(2006): 米国「Triadアプローチ」に対する考察,第12回 地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会講演集,S6-14 p.839~842.

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