土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

化学酸化技術としてのアルカリ活性化・過硫酸法の適用性

(著作者)
  • 大澤 武彦1
  • 角田 真之2
  • 西村 実1
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2株式会社ランドコンシェルジュ

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1.はじめに

現在,汚染土壌・地下水の浄化技術分野で、化学的酸化法と言えばフェントン化学酸化法(以下F-法と言う)が主流である.F-法では反応環境のpHを2~4程度にコントロールすることが必須であるが,サイトによっては,地盤中にコンクリートガラが埋められている1)或いは既にアルカリ性材料により地盤改良が施されているために土壌環境がアルカリ性となり,F-法に適した酸性環境を維持できないことがある.更に,沖縄県のアルカリ性土壌のように,酸に対する土壌の緩衝性が大である地質由来のために,F-法の適用が難しいことが予見される.

最近,新しい化学酸化法として過硫酸ナトリウム(以下SPS:Sodium Persulfateという)を活性化する酸化法が注目され2),アルカリ活性化(AA)-SPS法(以下AA-SPS法と言う:Alkaline Activator- Sodium Persulfate)は,F-法が適用し難いアルカリ性の土壌あるいは塩素化エタン分解に適用が可能であると考えた.

F-法の適性を汚染物質に対する分解性という視点からみると,塩素化VOCのなかでは塩素化エテンは容易に分解できるが,塩素化エタンは分解し難い2),3)と言われている.

現在,AA-SPS法はアルカリ性土壌或いは塩素化エタンの分解に適用できるかを判断できる情報が充分にあるとは言い難い.

そこで,本研究ではAA-SPS法はフェントン法が不適と思われる沖縄のアルカリ性土壌に適用できるのか,汚染物質として塩素化エタンの分解に適用できるのかをF-法との比較から実験的に明らかにする.

本研究ではアルカリ活性化剤としてRegenesis社(米国)のRegenOx partB(以下ROXと仮称する)を応用する.筆者はROXをSPSのアルカリ活性化剤としてNaOH(水酸化ナトリウム)と同等な活性化機能を有していることを既に報告している4).ROXをアルカリ活性化剤としたROX-SPS法もAA-SPS法の範疇とする.

2.実験

2.1 アルカリ性土壌に対するAA-SPS法の適用

本項の評価スキームを図―1に示す.

アルカリ性土壌として沖縄県の泥灰岩の風化土壌(以下ジャーガルという)及び隆起サンゴ石灰岩土壌(以下 島尻マージという)を選び,F-法に 適したpH環境の制御ができるのか,次にフェントン薬剤条件あるいはAA-SPS薬剤条件下に於いてそれぞれの反応に適したpH状態を維持できるかの評価を行い,最後にベンゼン(以下Bzと言う) を含むアルカリ土壌にROX-SPS法を適用した場合の評価を行った.

以下に述べる試験では筆者らが実際に行っている浄化工事のフェントン薬剤条件と同一にしている.

(1)供試土壌

本試験では沖縄アルカリ性土壌としてジャーガル及び塩尻マージ,そして比較の土壌として黒ボク土を使用した.ジャーガルは中頭郡西原町在の畑地で採取した表層土を,島尻マージ及び黒ボク土は園芸店で購入した園芸用土壌を使用した.

入手した土壌は2mm目篩で篩い,その通過分を供試土壌とした.

(2)土壌に対するクエン酸水溶液によるpH滴定試験

供試土壌のクエン酸水溶液に対する緩衝性からF-法の適用性を評価した.

土壌(dry)50gをデュラン瓶に入れ,土壌と水比が0.25となるように蒸留水を加え,スターラーで攪拌を続けながら10%クエン酸水溶液をペリスタスタティックポンプで送液・添加しながら,上澄み液のpHを連続測定した.pHがプラトー状態となった時点を終点とした.

(3)フェントン薬剤添加における土壌スラリーpHの測定

アルカリ性土壌に対しF-法の適用性を評価するために,表-1のフェントン薬剤組成の溶液と土壌をスラリー化し,上澄み溶液のpHを測定した.

(4)ROX添加における土壌スラリーpHの測定

アルカリ性土壌に対するROX-SPS法の適用性を評価するために各土壌10gを表-2のROX薬剤組成の溶液と土壌をスラリー化し,その上澄み溶液のpHを測定した.

(5)模擬ベンゼン汚染土に対するROX-SPS法によるBz分解試験

各土壌15gを9本の遠沈管毎に秤とり(ブランク0時用として3本,ブランク24時間用として3本,反応24時間用として3本),土壌重量の50%の蒸留水を加える.これにBz濃度を100mg/Lに調製したストックソリューション1.5mLを上記の反応系3本に添加し、ブランク系6本にはこれと同量の蒸留水を添加した.最後に反応系だけにはROXとSPSを加えた.ブランクにはROXとSPS水溶液と同一量の蒸留水を添加した.反応系の溶液条件は各土壌とも,ROXは土壌重量に対して2.0%重量,SPSは土壌重量に対して2.0%重量とした.

Bz分解性は反応開始時より所定時間反応した後,反応系の溶液及び土壌に残存しているBz含有濃度(mg/kg)で評価する.Bz含有量(mg/kg)の測定は「外因性内分泌撹乱化学物質調査 暫定マニュアル」に記載の方法5)に準拠した.

2.2 塩素化エタンの分解試験

四塩化炭素,クロロホルム,ジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタンに対する分解性についてF-法と ROX-SPSを図-2の試験フロー及び表-3の溶液条件を設定して比較実験を行った.

四塩化炭素,クロロホルム,ジクロロメタン及び1,2-ジクロロエタンがそれぞれ20mg/L程度の濃度になるように化合物毎にストックソリューションを調製した.このストックソリューションを用い,表-3の条件で 化合物毎及び反応時間毎の反応溶液を調製した.併せて,酸化剤を含まないブランク溶液を用意した.

調製後,溶液を所定時間静置した後の4種類の塩素化エタン濃度をヘッドスペース-GC/MS法により測定した(図-2).

3.結果と考察

(1)アルカリ性土壌の酸に対する緩衝性からみた化学酸化法の適用性評価

本試験の供試ジャーガルはpH7.9で弱アルカリ寄りであり(表-4),平均的なジャーガル自体のpHは7.9~8.1の弱アルカリ~アルカリである(6

pH滴定曲線(図-3~図-5)は横軸に土壌重量当たりのクエン酸重量(g)を,縦軸はpH値としている.

ジャーガルはクエン酸に対してpH5.8程度でプラトー状態(図-3)となり,酸に対する緩衝性が高いことが認められた.

これらの結果よりジャーガルはF-法に適した酸性の反応環境を維持するには多量の酸の添加が必要になり,実用上,F-法は不適で,AA-SPS法が適用できる可能性があると評価した.

本試験に供した島尻マージはジャーガルに比して,クエン酸に対する緩衝性が低い結果を得た(図-4).

平均的な島尻マージのpH範囲は7.1~7.4の中性~弱アルカリといわれている6),本試験に用いた島尻マージのpHは6.5の弱酸性で,一般の島尻マージに比べpHが低かった.そのために,島尻マージはクエン酸に対して緩衝性が低かったと推察される.これらを考え合わせるとF-法に適した酸性の反応環境にすることは可能である.

実用上,島尻マージへの化学酸化法の適用はF-法とAA-SPS法の境界領域にあると評価できる.黒ボク土はクエン酸に対する緩衝能はなく,pHを酸性に維持できるか否かの視点からはF-法に適した土壌であると評価した.

(2)フェントン薬剤添加と土壌スラリーのpH

表-5から,ジャーガルをフェントン薬剤溶液に浸漬した場合,ジャーガル自体のpH7.9(表-4)と殆ど変わらず,pHは7.6~7.8の弱アルカリを保持していた.この結果は前述(1)の結果とも整合し,ジャーガルは酸に対する緩衝性が高いために,F-法は不適と評価した.図-4及び5から分かるように,島尻マージと黒ボク土はフェントン薬剤(H2O2水及び28%硫酸第1鉄水溶液)と混合した時点で弱酸性を示し,この溶液にpH調整剤であるクエン酸を添加すれば,更に低pHとなるのでF-法には適と評価できる.

一般の島尻マージについてはpHが弱アルカリ6)の場合があり,今回の実験からすべての島尻マージに対しF-法が適であるとは言い難く,ROX―SPS法と境界領域にあるとするのが妥当であると評価した.

(3)アルカリ活性化剤(ROX)添加と土壌スラリーのpH

アルカリ活性化剤(ROX)を添加した土壌スラリーのpHを表-6に示した.ROXを2%添加した場合,ジャーガルではpH9.7となり,SPSを活性化できるpHであった.島尻マージにおけるpHは7.9の弱アルカリであった.黒ボク土では,ROX添加後においても黒ボク自体のpH5.5と大きく変わらず,アルカリに対して緩衝性が高いことが確認された.以上より,ジャーガルにはROX―SPS法が適し,島尻マージにはROX―SPS法がやや適と評価した.黒ボク土にはROX―SPS法は不適であると評価した.

(4)ROX-SPSのアルカリ性土壌中Bzの分解性

反応24時間後のBz減少率[(Bz初期濃度-反応後のBz濃度)/Bz初期濃度×100%]はジャーガルでは64%島尻マージでは63%,黒ボク土では15%であった(図-6).

黒ボク土でBz減少率が少であったことは,前項(3)で述べたように反応時のpHが低く,SPSが活性化されていないことに起因している他に土壌中に有機物の腐植を多量に含んでいる(表-1)ことによることも考えられる.

(5)塩素化エタンの分解性 

F-法(H2O2/Fe)1),2)は塩素化エテンを容易に分解するが,ジクロロメタン,ジクロエタンの塩素化エタンに対しては低分解性で,四塩化炭素等,クロロホルムに対しては難分解であるとされている.

SPSを紫外線,オゾン,Fe2+で活性化した場合の塩素化エテン或いは塩素化エタンの分解については多くの報告例がある.

AA-SPS法に関する塩素化エタンの分解に関してはアルカリ活性化剤としてNaOHあるいはKOHを用いた報告7)8)があるが,アルカリ活性化剤としてROXを用いて塩素化エタンを分解した報告事例は見当たらない.F-法におけるクロロホルム,ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタンの分解は速く,6時間までに80%以上の減少がみとめられた.24時間において1,2-ジクロロエタンとジクロロメタンの100%が減少したことを認めた.四塩化炭素は6時間以降の減少は認められなかった(図‐7、表-8).

4種類の塩素化エタンの減少率が大きな順に並べると,1,2-ジクロロエタン≧ジクロロメタン≧クロロホルム>四塩化炭素となることが認められた.F-法は即効性の高い酸化法であるといえる.ROX-SPS法ではF-法と異なる減少傾向が認められた.ROX-SPS法では四塩化炭素,クロロホルム,ジクロロメタンおよび1.2-ジクロロエタンにおける初期~24時間までの減少率はフェントン法にくらべて小で,4種類の塩素化エタン間の減少率は 26%~32%で同程度であった(表-8).ROX-SPS法ではクロロホルム,ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタンの間で分解性に顕著な違いは認められなかった.

解性に顕著な違いは認められなかった.

ROX-SPS法における四塩化炭素についてはF-法と同様に24時間以降の減少は認められなかった(図‐8、表-8).ROX-SPSでは1,2-ジクロロエタン,ジクロロメタン及びクロロホルムは192時間(8日間)までの長い期間に亘り減少傾向が継続し,192時間後には80%~90%の減少が認められた(表-8).

フェントン法とROX-SPS法において,クロロホルム,ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタンに対してフェントン法は即効的分解でROX-SPSは遅行的分解性であることを実験的に認めた.

4.おわりに

現在、フェントン法が原位置化学酸化技術の主流であるが,ROX-SPS法がフェントン法を補完する化学酸化技術の一つとして進展することを期待したい.

以下に試験結果をまとめる.

沖縄県特有のアルカリ性土壌(ジャーガル及び島尻マージ)は酸に対して緩衝性が高いので,反応条件を酸性にすることが必須のフェントン法には不適と評価した.

ベンゼン(Bz)を含むジャーガル及び島尻マージのモデル汚染土壌にROX―過硫酸ソーダ法(ROX-SPS)を適用した分解実験を行い,アルカリ性土壌・Bzに対してはROX-SPS法が適用できることを認めた.

ROX-SPS法はクロロホルム,ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタンについては,フェントン法に較べ初期の反応速度は若干遅くなるものの,酸化力の持続性が長く,フェントン酸化法に遜色のない化学酸化法であると評価した.

フェントン法とROX-SPS法において,クロロホルム,ジクロロメタンおよび1,2-ジクロロエタンに対してフェントン法は即効的分解性でROX-SPSは遅行的分解性を示すことを認めた.

参考文献

1)

中間哲志, 長野克己, 大澤武彦, 山内仁(2007):フェントン反応を用いた浄化方法について,土壌・地下水汚染とその防止対策に関する研究集会講演集

2)

The Interstate Technology & Regulatory Council(2005):In Situ Chemical Oxidation Team:Technical and Regulatory Guidance for In Situ Chemical Oxidation of Contaminated Soil and Groundwater Second Edition, p.17.

3)

Scott G. Holing and Bruce E. Pivetz:Engineering Issue In-Situ Chemical Oxidation, United States Environmental Protection Agency,pp.10~11.

4)

大澤武彦,角田真之,西村実(2009):化学酸化剤としてのアルカリ活性化過硫酸ソーダのVOCなどに対する分解性と浄化適用性,第15回土壌・地下水汚染とその防止対策に関する研究集会講演集

5)

環境庁水質保全局水質管理課(平成10年10月):外因性内分泌攪乱化学物質調査暫定マニュアル(水質,底質,水生生物)1.2-ジブロモ-3-クロロプロパン,スチレン及びn-ブチルベンゼンの分析法(ヘッドスペース法)p.Ⅶ-1~Ⅶ-7

6)

日本土壌肥料学会 九州支部編(2004):九州・沖縄の農業と土壌肥料 自然と共存供給基地をめざして2004,(3)土壌資源評価(沖縄に分布する特殊土壌),p24~26

7)

Philip A.Block,Richard A.Brown,David Robinson(2004):Novel Activation Technologies for Sodium Persulfate In Situ Chemical Oxidation ,Proceedings of the Fourth International Conference on the Remediation of Chlorinated and Recalcitrant Compounds,

8)

Claudio Sandrone,Paola Goria,Marcello Carboni(2009):Remediation of 1.2-Dichloethane(1.2-DCA) And Vinyl Chloride(VC) Contaminated Groundwater:lab and field pilot test,Proceedings of The International  Conference BOSICON-Rome,May pp.13-15,2009.

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