土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

株式会社エンバイオ・ホールディングス(東証マザーズ:6092)グループ

お問い合わせ 03-5297-7288 引合~見積・提案書5日で提出します。

メールでのお問い合わせはこちら

発表論文

原位置化学酸化法における適切な薬剤量の設計と施工

(著作者)
  • 小林裕一
  • 中間哲志
  • 長野勝己
  • 大澤武彦
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

PDFダウンロード

1.はじめに

土壌汚染対策法の施行を契機として土壌・地下水汚染の対策件数が増加している。汚染された土壌・地下水の対策には汚染土壌を場外へ搬出する掘削除去や、人体の摂取を防止するための汚染の封じ込め処置、汚染物質を現地にて化学的あるいは生物的に分解して無害化する原位置での化学酸化法やバイオレメディエーションなどがある。これらのうち実施件数が現在最も多いのは掘削除去であるが、この対策方法は確実に汚染土壌を対象地から除去できる一方、汚染土壌の所在が不明になる恐れや、搬出に伴って汚染を拡散させる可能性があり、環境リスク管理の点から問題が指摘されている1)

そこで、汚染土壌を場外へ搬出せず原位置にて汚染物質を無害化する原位置浄化技術が重要であると考えられる。原位置浄化技術のひとつであるフェントン反応剤を用いた工法は、油分や第一種特定有害物質により汚染された土壌・地下水に対し、強力な酸化能力をもつフェントン氏薬剤(主剤は過酸化水素)を注入し、汚染物質を分解、除去する技術である。この原位置化学酸化法は他の原位置浄化技術と比較して、工期が短期間にでき、高濃度の汚染にも対応できる特徴がある。

本工法は目視することのできない土壌中へ薬剤を注入するという技術の特性上、薬剤の浸透状況や浄化の達成状況を全ての土壌について把握することは難しい。したがって、確実に汚染物質を対象地から除去するためには、対象とする土量や薬剤の適用性を考慮し、必要十分な薬剤量の設計と適切な施工を行う必要がある。

そこで本研究では、原位置化学酸化法によって浄化を完了した対策事例を用いて、対策期間中におけるフェントン反応剤の注入量と汚染物質の低減効果の表れ方を統計的に検証し、確実な浄化対策を行うための今後の課題と展望について検討した。

2.方法

本研究は、土壌・地下水中のベンゼンを対象として実施し、対策を完了した一連のフェントン反応剤による原位置浄化対策に関して行った。施工期間中に区画ごとの土壌と地下水を対象としたモニタリングを行い、モニタリングを実施した時点における薬剤の注入量とベンゼンの土壌溶出量および地下水濃度の低減率の関係を調べた。

対象範囲は100㎡の浄化区画を14区画設定し、対象深度はGL-2.0m~5.0m とした。区画ごとに注入井を2m間隔で格子状に設置し、フェントン反応剤は設置した注入井へポンプを使用して注入した。区画の条件および対象土量等を表-1 に示す。なお、これらの区画のうち3区画ではベンゼンの土壌溶出量が測定下限値未満であ ったため、土壌の検討対象から除外した。

表-1 区画の概要
区画面積 100 ㎡
区画数 14
対象面積 1400 ㎡
対象深度 2 m~5 m
対象土量 4200 ㎥
地下水位 GL- 2 m

土壌試料の採取は各区画において注入終了48時間経過後、打撃式ボーリングマシンを用いて行った。採取はGL-2.0m,3.0m,4.0m,5.0mで行い、各深度におけるベンゼンの土壌溶出量の平均を求めた。地下水試料の採取は注入終了48時間経過後、観測井からベーラーを用いて行った。ベンゼンの土壌溶出量および地下水のベンゼン濃度の分析は公定法(JIS K 0125 5.2)に従った。濃度低減率の算出方法を以下に示す。

濃度低減率:A={(C0-C1)/C0}×100
C0,C1:初期濃度注入終了48時間経過後の濃度
(土壌のC0,C1はそれぞれ各深度の平均値とする)

使用するフェントン反応剤の量を設計するにあたり、実サイトの土壌・地下水に対する薬剤の適用性を調べるためのトリータビリティー試験を実施した。試験は反応系と対照系の2通りの条件を設定した。

土壌の反応系の試験は、原土壌に10wt.%のミネラルウォーターを添加したものを試験土壌とした。過酸化水素(H2O2)は試験土壌の質量の1.5%とし、Fe/H2O2(モル比)=1/50 となるように硫酸第一鉄溶液を添加した。クエン酸は50gの試験土壌に対し、10%クエン酸水溶液の添加量とpHの関係を求め、試験土壌のpHが3~4 になる量とした。試験の条件を表‐2 に示す。

表-2 土壌のトリータビリティー試験条件
反応試料 対照試料
試料量 30ml 試料量 30ml
10%クエン酸水溶液の添加量 0.35ml 純水添加量 1.45ml
30%過酸化水素水の添加量 1.00ml    
28%硫酸第一鉄の添加量 0.092ml    

地下水の反応系の試験は、原試料を攪拌し、30分静置後の中層の水を試験に使用した。過酸化水素(H2O2)は地下水の質量の1.0%とし、Fe/H2O2(モル比)=1/100 となるように硫酸第一鉄溶液を添加した。クエン酸は50mlの前処理済みの地下水に対し、10%クエン酸水溶液の添加量とpHの関係を求め、試験土壌のpHが3~4になる量とした。試験の条件を表‐3 に示す。

表-3 地下水のトリータビリティー試験条件
反応試料 対照試料
試料量 20g 試料量 20g
ミネラルウォーター添加量 2ml ミネラルウォーター添加量 2ml
10%クエン酸水溶液の添加量 15ml 純水添加量 18ml
30%過酸化水素水の添加量 0.90ml    
28%硫酸第一鉄の添加量 0.10ml    

トリータビリティー試験の結果を表-4 に示す。試験の結果、ベンゼンの土壌溶出量は80%低減し、地下水のベンゼン濃度は測定下限値未満まで低減することを確認した。

表-4 トリータビリティー試験結果
  反応前
(mg/L)
6時間反応後
(mg/L)
pH 低減率
土壌 0.079 0.016 3~4 80 %
地下水 0.54 <0.001 3~4 -

トリータビリティー試験の結果に基づき、必要な過酸化水素(H2O2)の質量(M)を以下のように求めた。これに従えば、1区画あたりに必要となる過酸化水素(H2O2)は6400kgとなる。また、1区画あたりに使用する硫酸第一鉄とクエン酸はそれぞれ700kgと500kgとした。

M = ms・ts + mw・tw
全土壌の乾燥質量: ms=Ms(l-Wc)       土壌の比重: ρs=1.7
全地下水の質量: mw=Ms・Wc       土壌の含水率: Wc=21%
全土壌の湿重量: Ms=ρs・Vs       土壌に対する過酸化水素濃度: ts=0.01
全土壌の体積: Vs       地下水に対する過酸化水素濃度: tw=0.005

3.結果

薬剤注入量とベンゼン土壌溶出量の低減率の関係を図-1 に示す。同図は施工期間中のモニタリング結果と、モニタリングを実施した一時点におけるフェントン反応剤の注入実績に基づいている。それぞれのプロットは各区画を表し、図中の太い実線は過酸化水素(35% 換算)の1区画あたりの設計量を示す。

薬剤の注入量に対する低減率が比較的高い区画群(近似曲線を引いた部分)と低い区画群(破線の楕円で囲んだ部分)に分かれることが認められ、前者の区画群では注入量と低減率は高い正の相関がある。この区画群に関すれば、設計量を注入することによってほぼ100%の低減率が期待できることがわかり、薬剤量の設計が妥当であったことが示唆される。また、後者の区画群ではさらに薬剤の注入を継続することで高い低減率を達成できると考えられる。

地下水ベンゼン濃度の低減率とフェントン反応剤の注入量との関係を区画ごとにプロットした散布図を図-2に示す。

土壌の場合と同様に、薬剤の注入量に対する低減率が比較的高い区画群と低い区画群に分かれることが認められ、前者の区画群では注入量と低減率には正の相関がある。前者の区画に関すれば設計の薬剤量でほぼ100%の低減率を達成できることが分かる。後者の区画群ではさらに薬剤の注入を継続することで高い低減率を達成できると考えられる。

4.考察

今回の検討結果では、施工期間中の対象物質(ベンゼン)濃度の低減率と、その時点における薬剤注入量の関係を調べることによって、ベンゼン濃度の低減率が設計どおりに期待できる区画群と、さらに薬剤の注入が必要と見込まれる区画群に分かれることが明らかとなった。前者の区画群からは薬剤量の設計が適切であることが示唆される。図-3 、図-4 に土壌と地下水における薬剤の注入量と低減率の関係を示す。近似曲線は低減率の低い区画群に関して引き、数字はpH(試験紙を用いて現場にて測定)を示す。後者の区画群に関して、注入量と低減率の間に正の相関があると仮定した場合、後者の区画群では、設計量に対しておよそ1.5~2 倍程度の注入量が必要であることが読み取れる。

薬剤の注入量に対して低減率が低くなった原因として以下の要因を仮定した。

①土壌・地下水の注入前のpHが高く、フェントン反応による分解効率が低下した。

②汚染物質の初期濃度が高いために設計量の薬剤では量が足りない。

それぞれの区画群で有意なpHの違いは認められない。また、初期濃度にも有意な傾向は認められなかった。フェントン反応による汚染物質の分解を阻害するものとして、有機物の含有などが考えられるが、これらの要因も含め今後の研究課題である。

今回の検討の結果、一定の区画に着目すれば、薬剤の注入量と汚染物質(ベンゼン)の濃度低減率との間には高い相関があることが示された。したがって本研究の手法により、浄化目標達成の見込みを対策工事の早い段階で簡潔に求めることが可能になると考えられる。さらに今後、汚染物質の低減率に影響を与える要因を明らかにできれば、適切な薬剤量の設計をする上でより信頼性の高い有効な手段になると考えられる。

【参考文献】

1)

今後の土壌汚染対策の在り方について(答申) 中央環境審議会 平成20年12月19日

  • 発表論文一覧
  • 実績
  • 会社情報

お問い合わせ

相見積のお問い合わせもお気軽に。セカンドオピニオンとしてもご活用ください。TEL:03-5297-7288

お問い合わせ

スタッフ紹介

採用情報