土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

粘性土地盤におけるフェントン反応剤による原位置浄化手法

(著作者)
  • 草場周作1
  • 成島誠一2
  • 三村卓2
  • 長野勝己1
  • 中島正3
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2西武建設株式会社
  • 3株式会社リグランド

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1.はじめに

フェントン反応剤による化学酸化工法は、高濃度の汚染に対応でき、他の工法と比較し浄化期間が短いという点でVOCsまたは油分による汚染の浄化手法として有効であり、多くの実績をあげている。しかし、フェントン反応剤による原位置浄化でも浄化が進まない場合があり、その場合は以下のいずれかの理由にあてはまると考えられる。

①②③については、事前に現地試料を用いたトリタビリティー試験あるいは現地適用性試験を実施することによって、評価することが可能である。一方、④については、限定された範囲で実施する現地適用性試験では評価しにくく、本格的な浄化工事開始後に明らかとなるケースが多い。さらに、透水性が悪く、異方性も大きな粘性土地盤を対象としたサイトにおいて浄化が進まないケースの多くは、④の理由によるものと考えられる。

また、一般に④の事象を解決するために考えられる方針を以下に示す。

本稿では、上記のうち「a. 注入打設量を増加させる。」の方針のもとに、三次元的に高密度でフェントン反応剤をポイント注入するための効率的な手法を考案し、粘性土地盤からなる実汚染サイトで施工したので、その事例を紹介する。

2.サイトの概要

本サイトは工場跡地で、現況は更地である。過去にテトラクロロエチレンの漏洩があり、テトラクロロエチレン及びその分解生成物による土壌・地下水汚染が存在した。土壌の最高濃度はテトラクロロエチレン76mg/Lであるが、汚染土壌の大部分はその分解生成物であるシス-1,2-ジクロロエチレン(0.1~5mg/L程度)によるものであった。

当該地質はGL-11m程度までシルトと砂質シルトの互層を主体とし、その下位は細砂を主体とする層であり、汚染が最も深い地点ではこの細砂層まで汚染が到達している。シルトと砂質シルトの互層は、大部分の深度でN値が0~1と非常に軟弱な地盤となっている。地下水位は、GL-1.0~1.5m程度である。

3.浄化方法

3.1 ポイント注入について

ポイント注入は、図1の模式図に示すボーリングロッドとドライブポイントを用い薬剤を注入するものである。その特長は、ドライブポイントをドライブポイントホルダーに装着し、所定深度までボーリングマシンを用いて打ち込み後、ボーリングロッドを少し引き上げるか細い鉄棒をボーリングロッド内に挿入して押し出す方法でこのドライブポイントを取り外し、通常のボーリングロッドを使った注入と同様の状態となる。利点としては、ボーリングロッドの打ち込みと注入が交互に並行作業となるため、注入の状況に応じて即時に打ち込み深度・範囲・密度等の仕様を変更することが可能なことである。

塩素系VOCs汚染は、一般に粘性土地盤においても深い深度まで汚染が拡散するケースが多く、汚染深度範囲全体をスクリーンとする注入井を設置して注入を実施した場合、スクリーンに接する地層の中で相対的に透水性のよい薄層に卓越して薬剤が浸透し、その薄層以外の浄化が不十分となる場合が多い。また、深度別に複数の注入井を設置した場合も、掘削孔と井戸材とのクリアランスの遮水が不十分で、そのクリアランスを伝って透水性のよい目的外の層に浸透するケースや、地表にリークするケースがある。そこで、本サイトでは多地点同時注入、多深度段階的注入などポイント注入の特長を活かした効率的な工法を考案したので以下に詳述する。

3.2 平面的高密度ポイント注入(多地点同時注入)

平面的に高密度で注入するためには、単純に所定範囲内でできるだけ多くの地点数で注入すればよく、コスト・工期の圧縮のためには、多地点で同時に注入することが必要となる。

本サイトでは、1.25mピッチでボーリングロッドを打ち込み、20~30地点程度で同時にフェントン反応剤を注入した(写真1参照)。

注入は図2の模式図に示すように、注入地点数と同数のポンプを用いて実施し、ポンプからの注入配管の枝分けは行わなかった。その理由は、1つのポンプから注入配管を枝分けして複数地点に注入する場合、粘性土地盤のような地点あたりの注入流量が低くなるサイトでは、バルブ操作等で各地点の流量を均一に調整することが困難だからである。

なお、試験的に同方法で注入密度をさらに高くした際には、注入箇所において圧力の干渉が大きくなり、流量の低下や、地表へのリーク量の増加が見られたため、実施工においては最適な注入平面密度が存在すると考えられる。

3.2 深度的高密度ポイント注入(多深度段階的注入)

深度的に高密度で注入するため、多深度における段階的注入を実施した。

当初図3に示すように汚染最深部までボーリングロッドを打ち込んで薬剤を注入後、ボーリングロッドを2mずつ引き上げながら薬剤を注入する方法で施工したところ、ボーリングロッドを引き抜いた箇所の孔壁が自立し、注入した薬剤が相対的に透水性のよい下位の砂層に卓越して浸透していることが判明した。よって、図4に示すように汚染最浅部から薬剤を注入後、ボーリングロッドを2mずつ追加打ち込みしながら薬剤を注入する方法で施工し、所定深度に薬剤を浸透させることが可能となった。

ドライブポイントは、1段階目の注入において取り外すため、通常は追加打ち込み時に土壌がボーリングロッド内に詰まり次段階の注入が不可となるが、対象地の粘性土が非常に軟弱であることと、ボーリングロッドの径がサンプラー等に比べて細く土壌が入りにくいという要因のため、同方法が可能になったと考える。なお、砂分が多い深度においては、ボーリングロッド内に土壌が少量詰まることがあったが、“ポンプで圧入する”または“詰まった土壌を細い鉄棒で突き崩す”方法により、薬剤の注入が可能となった。


多深度段階的注入方法に対する補足

本サイトのような孔壁が自立する粘性土地盤において、孔内をセメントミルク等で充填しながらボーリングロッドを引き上げていく方法も可能であるが、セメントミルク等の影響で地下水環境が高アルカリになるとフェントン反応剤による酸化分解効率が低下するため、注入薬剤としてフェントン反応剤を用いる場合には適さないと判断した。また、高アルカリでも適応可能な薬剤の場合でも、セメントミルクが固化するまで次深度での注入が不可であり、セメントによるボーリングロッド内の目詰まりを防止する作業も必要となるため、追加打ち込みしながらの注入に比べ作業効率が低くなる。

追加打ち込みしながらの注入を本サイトのような非常に軟弱な地盤以外で実施する場合、ボーリングロッド内に土壌が詰まり注入ができなくなることが予想される。その場合、注入後にボーリングロッドを全て引き抜き、ドライブポイントを再度装着した後に次段階の深度まで打ち込むことにより、上位から下位方向への多深度段階的注入が可能となるが、同一孔で繰り返しボーリングロッドの上げ下げを行うことになり、地盤とボーリングロッドの密着性が低下し、そのクリアランスを伝って透水性のよい目的外の層に浸透または地表にリークしやすくなる。

4.考察・まとめ

本報告をまとめると以下となる。

以下に考察と今後の課題を記す。

考察

ボーリングロッドを追加打ち込みしながら薬剤を注入する方法により、ボーリングロッドと地盤の間にクリアランスがなく密着した状態を維持でき、薬剤を確実に所定深度に注入できたと考えられる。また、上位深度から浄化を進めるため、上位の高濃度の汚染を先に低減させた上で、ボーリング裸孔伝いに汚染地下水が下位へ流動することも防止でき、下位に高濃度の汚染を拡散させる危険性を低減することができると考えられる。

ボーリングロッドを追加打ち込みしながら薬剤を注入する方法は、本サイトのようなN値が0~1と非常に軟弱な粘性土地盤でのみ有用であると考えられる。

過酸化水素水を用いた通常のフェントン反応剤は注入後浄化効果を発揮する時間が短く、注入後の拡散が期待できないため、高密度で注入することが浄化効果の均一性において重要な要素となる。

今後の課題

締まった粘性土のような非常に透水性の悪い層に対しては注入密度を上げても十分な浄化効果は得られないと考えられ、ポイント注入が適応可能な粘性土の性状の判断基準を確立する必要がある。

砂地盤中に粘性土を挟むような地質構造に対しては、薬剤を注入してもほとんどが砂層に浸透する可能性が高く、高密度のポイント注入を実践的に適応できるか不確かである。

理論的には、平面、深度ともに注入密度を高くするほど浄化均一性は向上するが、実際には圧力干渉の影響で注入効率が低減することもあり、コスト・工期を考慮したうえで、最適な注入密度を設計する手法を確立する必要がある。

【参考文献】

1)

中間哲志、他:フェントン反応剤を用いた浄化方法について, 第12回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション3, No.21, 2007

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