土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

コスト・工期を確定する原位置浄化のあり方

(著作者)
  • 山内仁1
  • 仲間哲志1
  • 西村実1
  • 大岡健三2
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2社団法人産業環境管理委員会

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1.はじめに

2007 年10 月、オランダ・アムステルダムで開かれた土壌地下水汚染の浄化やサイト評価に関するヨーロッパ会議ECOR-4/EC-DNAPL-2 で、パネルディスカッション「Guaranteed Fixed Price Remediation in Europe」1)が行なわれた。同パネルディスカッションでは、原位置浄化措置などによる浄化終了を如何にして確定した費用の中で実現できるか、浄化技術や社会制度のあり方について議論が行なわれていた。振り返って我が国では、原位置浄化措置など土壌の掘削や場外運搬を行なわない措置の期待は高いが、浄化対策で採用されている措置の多くは掘削除去措置となっている。この理由として、原位置浄化措置では浄化効果の確実性や工期・費用を確定できないのではないかといった不安要素があるためといわれている。

筆者らは2004 年よりフェントン反応剤を使用した原位置浄化を行ってきた。これら原位置浄化サイトのうち、工期や金額について契約上の関与ができ、2008 年3 月までに浄化終了を迎えたサイトは48 箇所であった。本論では上記の48 サイトのデータを基にして、原位置浄化措置の工期と費用を契約時に確定するために必要な技術的要素と社会的要素の検討を行なった結果を報告する。

2.評価対象とした原位置浄化サイトの情報

評価対象とした48 サイト(母数)のうち、40 サイトがガソリンスタンド等、8 サイトが製造業事業所等であった(図2.1)。浄化終了までの工期は約73%が2 ケ月以内である(図2.2)。浄化対象土量は500m3 以下が全体の68%で(図2.3)、浄化工法はフェントン反応剤を使用した原位置浄化(単独工法)か75%と最も多く、他はフェントン反応剤による原位置浄化と掘削除去やバイオレメディエーションの組み合わせとなっている(図2.4)。

平成17 度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果2)によれば基準超過土量が500m3 以下の超過事例が累計47.4%である。また、第一種特定有害物質の中で超過事例が多い物質はトリクロロエチレンである。したがって、本研究にて評価対象としたサイトは比較的小規模なサイトが多い。また、対象サイトの業種はガソリンスタンド等が80%を超え、浄化対象物質はベンゼンや油分が多いといった特徴がある。

3.コスト・工期を確定した原位置浄化を行うために、技術的には何を行なうべきか

評価対象とした48 サイトの中で、当初計画した工期内で浄化が終了したサイト(以下、工期延長無しサイト)は29 箇所60%、工期を延長したサイト(工期延長有りサイト)は19 箇所40%であった(図3.1)。

ただし、工期延長有り19 サイトのうち、延長した工期が一ヶ月以内であるサイトは工期延長有りサイト全体の66%12 個所であった(図3.2)。また、工期延長有りサイトの中で金額の変更を伴ったサイトは7 箇所(母数の15%)であった。

次に、工期延長有りのサイトには技術的に何が足りなかったのであろうか。サイトの業種や浄化対象物質、浄化対象土量、事前調査実施の有無、汚染の原因や拡散経路解明の有無、戻り汚染の有無、浄化作業範囲が十分に確保できたか及び埋設廃棄物の有無等の要素が工期延長に与えた影響について、工期延長無しサイトと工期延長有りサイトを対照する形で検討する。

(1)サイトの業種と浄化対象物質

工期延長無しサイトにも、ガソリンスタンドの他に製造業事業所、浄化対象物質にはベンゼン以外の第一種特定有害物質も有ることから(図3.3.(1)、図3.4(1))、工期延長の要因にサイトの業種、浄化対象物質は関与していないと判断する。

(2)浄化対象土量

工期延長有りサイトで最も規模が大きい浄化対象土量は10000m3 超過であり、工期延長無しサイトと比べると大型サイトが存在している。しかし、母数で最も箇所数が多かった500m3 以下のサイトの割合は工期延長無しが70%(図3.5(1))、工期延長有りが63%(図3.5(2))で軽微な差しか認められない。したがって、工期延長に関して浄化対象土量は関与していないと判断する。

(3)浄化設計のための事前調査の実施の有無

サイトの汚染原因、汚染の拡散経路及び浄化が必要な範囲を評価して、設計に必要なデータを得る調査を筆者らは事前調査と呼んでいる。工期延長無しサイトでは79%(図3.6(1))で事前調査を実施している。一方、工期延長有りサイトでは事前調査を実施した割合はやや少なく68%(3.6(2))である。事前調査実施の有無が浄化工期に影響するかどうか、さらに検討を進める。

(4)汚染原因や拡散経路個解明の有無

工期延長無しサイトでは86%で汚染の原因や汚染の拡散経路を特定している(図3.7(1))。一方、工期延長有りサイトでは汚染の原因や拡散経路が特定できたサイトの割合は42%(図3.7(2))と少なくなっている。したがって、事前調査実施による汚染原因と汚染の拡散経路の解明ができるかどうかが工期延長の要素の一つと考える。すなわち、NAPL の存在位置とPLUME の拡散方向を把握した上での原位置浄化の設計と実施が工期を確定する重要な要素と言える。

(5)戻り汚染の影響

浄化範囲の外側(特に敷地の外側)から汚染が浄化範囲内に戻る状態を筆者らは“戻り汚染”と呼ぶ。

工期延長無しサイトで戻り汚染が認められた事例は1 箇所3%(図3.8(1))であった。一方、工期延長有りサイトで戻り汚染が認められた事例は7 箇所37%(図3.8(2))と多い。したがって、工期を確定するためには戻り汚染の有無の評価、戻り汚染が予想される場合には戻り汚染に対する対応の準備が必要となる。

(6)作業範囲の確保

注入によりフェントン反応剤が到達する範囲は注入地点から半径2m程度と言われている3)。したがって、期待する浄化効果を得るためには浄化対象範囲全体をカバーする十分な作業範囲の確保が必要である。しかし、営業中のガソリンスタンドや製造業事業所では販売室や設備等の配置のため必要な作業範囲の確保が困難なサイトもある。

筆者らのデータでは、工期延長無しサイトでは90%(図3.9(1))で十分な作業範囲を確保していた。一方、工期延長有りサイトでは十分な作業範囲を確保できたサイトは47%(図3.9(2))であった。したがって、データ上でも当初工期内に浄化終了を迎えるためには浄化対象範囲に対して必要な作業範囲の確保が重要であるといえる。

(7)埋設廃棄物の有無

工期延長無しサイトで埋設廃棄物が見つかった事例は1 箇所3%(図3.10(1))であった。一方、工期延長有りサイトで埋設廃棄物が見つかった事例は4 箇所17%(図3.10(2))と多い。したがって、工期延長の要因に埋設廃棄物により影響は無視できないと考える。しかしながら、これらのサイトで埋設廃棄物が発見された経緯は、調査段階で発見されたのではなく、浄化工事作業中に発見されている。浄化設計や契約前に埋設廃棄物存在の有無を確認する方法の確立が課題である。

4.コストと工期を確定した原位置浄化を行うために

以上の検討の結果、工期を確定するためには「汚染原因や汚染の拡散経路の把握」及び「浄化対象範囲に応じた十分な作業範囲の確保」が重要な要素であることが判明した。ここで、「汚染原因や汚染の拡散経路の把握」及び「浄化対象範囲に応じた十分な作業範囲の確保」ができたサイトの工期延長の有無を図4.1 にまとめた。この結果、工期延長無しサイトが92%・22 箇所、工期延長有りサイトが8%・2 箇所となった。工期延長有り2 サイトの工期延長の期間は1 ヶ月以内と6 ヶ月以内であった。また、このうち金額の変更が有ったのは1 サイトであった。工期延長の原因は「戻り汚染」と推定している。

以上の結果から、筆者らが検討の対象とした業種及び浄化対象の範囲内では、汚染の原因と拡散経路の把握のための事前調査を適切に行うこと及び十分な作業範囲と確保することで、工期延長無しに原位置浄化が終了する確率は概ね90%確保できるといえる。また、戻り汚染の可能性と対応を考慮に入れ、工期延長1ヵ月以内を許容し金額の変更を伴わない条件で浄化が終了する確率は概ね95%となる。

したがって、原位置浄化措置実施の当事者間の契約の中で事前調査を実施すること及び1 ヵ月程度浄化工期の余裕を用意しておくことが原位置浄化の工期や金額に関するリスク低減につながる。

しかしながら、約10%、5 箇所のサイトで埋設廃棄物が認められている。埋設廃棄物の存在は事前調査によって発見されたのではなく、浄化作業中にその存在が確認された。原位置浄化契約前にその存在を把握することは困難である。また、埋設廃棄物の存在は工期延長の原因となると推定された。したがって、汚染原因や拡散経路に基づいた適切な設計の基に十分な作業範囲を確保した状態で原位置浄化作業を行ったとしても、予見できない埋設廃棄物の影響により、概ね10%のサイトで工期延長や金額変更の可能性が残されているといえる。

この埋設廃棄物等による工期延長の可能性10%に対しては保険の仕組みを活用したリスク低減について検討を進める必要がある。日本国内でも「コストキャップ」という名称で、汚染浄化費用を一定金額に固定することを保険会社が担保する手法が導入されている。しかし、欧米では「偶然・突発的な事故」に起因する均一リスクを対象にして損害を補償するのが保険の原則として捕らえてきた。したがって「コストキャップ」はどちらかというと共済や基金の積み立て、ファイナイトといった「保険リスクマネジメント」の範疇で認識されている。しかし、前述の通り想定外の浄化費用負担が発生するパラメーターが統計的に安定して得られるのであれば保険化の検討は可能である。ただし、地下タンク等の浄化に関する保険化には、地下タンクの老朽化・破損に関する物理化学的データと現場の地質水理を含む詳細なリスク調査と大量の事例を集積することが不可欠である。

5.おわりに

原位置浄化措置の契約の中で、事前調査を行ない汚染の原因と拡散経路を把握すること及び1 ヵ月程度の工期の余裕を織り込むことで契約上のリスクは大幅に低減することが判明した。しかしながら、筆者らが評価対象としたサイトはガソリンスタンド等が多い・比較的小規模といった特徴がある。国内での原位置浄化には浄化対象物質がトリクロロエチレン等であったり規模が大きなサイトであったりする事例が多数存在していると考えられる。今後、我が国においても原位置浄化の確実性と適用範囲について専門業界側から情報を持ち寄ることで、原位置浄化措置の社会的信頼性が高まることを期待する。

【参考文献】

1)

The 4th European Conference on Oxidation and Reduction Technologies for In-Situ Treatment of Soil and Groundwater (ECOR-4), The 2nd European Conference on DNAPL Characterization and Remediation (EC-DNAPL-2) ABSTRACT、P147(2007、10)

2)

環境省:平成17 度土壌汚染対策法の施行状況及び土壌汚染調査・対策事例等に関する調査結果

3)

井山浩他:化学的酸化分解における薬剤の到達範囲について、第13 回地下水・土壌汚染とその防止に関する研究集会(2007、6)

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