土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

ガソリンスタンドにおける原位置浄化の実績と対策に関する一考察

(著作者)
  • 中間哲志
  • 小林裕一
  • 山内 仁
  • 崎原 盛
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

全国にガソリンスタンドは約47,000 箇所にあり、石油販売登録業者は約23,000 社である。そのうち75%程度が個人経営などの中小零細企業といわれており、近年の競争激化による利益圧縮や急激な原油高などによる経営環境の悪化などから毎年約1,000 件近くのガソリンスタンドが減少している。一方で油汚染対策ガイドラインが2006 年3 月に発表され、ガソリンスタンドにおける土壌、地下水汚染とその浄化措置に関心が集まっている。

このような状況の中、廃止したガソリンスタンドが土地の売却や転用をする際に土壌地下水汚染の調査を行うケースや石油元売り各社が法令遵守、社会的責任の遂行という観点からガイドラインに沿った土壌地下水汚染の自主的な調査を実施して恒久的な土壌汚染対策や拡散防止対策を実施するケースが増えている。

本報告では、筆者らがこれまで実施してきた浄化措置のデータを基に、汚染発見の契機や最近の傾向、原位置浄化措置を中心とした浄化方法の効果、措置後に抱える諸問題やその原因、浄化措置後の跡地利用といった視点で評価を行い、浄化措置の今後のあり方に関して一考察及び、今後の原位置浄化について提案を述べる。

2.ガソリンスタンドにおける浄化対象物質と汚染発見の契機

表2.1 に筆者らが実施したガソリンスタンド(サービスステーション、以下一部SS と記す)の浄化措置の対象物質を示す。現在、土壌汚染の調査や浄化措置は石油の元売り各社や大手販売業者が中心となって進められているが、浄化措置の対象物質となるのは、ベンゼン、油分、鉛が主なものとなっており、浄化目標はベンゼンと鉛については環境基準を満たすこととし、油分については自主的な判断基準としてTPH 濃度で1,000mg/kg以下とするケースが多い。油臭油膜については浄化目標になるケースとならないケースとあり、発注主体によって判断は異なっている。

表2.1 浄化措置の対象物質
汚染対象物質 件数 %
ベンゼンのみ 28 44.4
油分のみ 16 25.4
ベンゼン+油分 17 27.0
2 3.2
合計 63 100.0

ガソリンスタンドにおける汚染発見の契機を表2.2 に示す。筆者らがガソリンスタンドの対策工事に着手した2004 年ごろは、解体工事中に汚染が見つかったり、苦情によって汚染が発覚したりといったケースも見られたが、最近ではほとんどの汚染はスクリーニング調査により見つけられている。しかし、タンク検査や配管検査などによる漏洩の発見や管理不十分あるいは人為的なミス(配管の接続ミス等)でおこった漏洩事故なども汚染発見の契機となっているケースもある。

表2.2 浄化措置の対象物質
項目 件数
スクリーニング調査 56
事故 5
解体工事 2
苦情 1

表2.3 に浄化措置を届け出た件数を示す。元売り、大手販売各社とも、自主的にガソリンスタンドの調査を行い、自主的に対応を進めており、土壌汚染対策法の適用を受けるような事例は見受けられない。一方、東京や埼玉のように条例適用案件として調査結果と拡散防止対策などの報告を必ず行っていることから、該当する案件は同表に計上されている。一方、調査結果を自主的 に市や県の窓口に報告した案件は、浄化措置を実施した案件全体から見ると極めて少ない。これは報告の義務がない、報告する必要がない、という理由の他に報告することによって問題を表沙汰にしたくないという理由もあるようである。また、ガソリンスタンド敷地において地下水汚染が見られ、敷地外への拡散が懸念されたにもかかわらず関係自治体に「報告すべき」という判断ができなかったケースもあったようである。しかし、最近は自主的対応でも関係自治体に調査結果を報告した方が良いと判断された場合、自発的に調査結果や措置内容を報告しようとする傾向にある。

表2.3 官庁への届け出(対象63 件中)
官庁に対策を届け出た案件 件数
土壌汚染対策法適用案件 0
条例適用案件 7
自主的対応として報告した案件 8

3.フェントン反応剤を用いた原位置浄化とその評価

表3.1 に筆者らが実施した浄化措置の内容とその比率を示す。浄化措置の方法は浄化措置の各実施機関により、得意技術、得意分野などが異なることから、技術の内容や比率は大きく異なることに留意した上で各データを見ていただきたい。

土壌汚染は顕在化しているものだけでもかなりの件数にのぼるが、これらの顕在化した汚染は一部にすぎず、潜在的な汚染は夥しいものと考えられている。近年は汚染土壌の処分場(処理施設)も不足していることもあり、掘削処分が環境に与える影響も大きいことから、積極的に汚染土壌をオンサイトで処理(浄化)するための議論も活発になってきており、跡地利用を考慮しながらオンサイト処理がなされた事例があるというヒヤリング結果も報告されている1)

表3.1 SSにおける浄化措置の実施例と残留汚染などの件数
浄化方法 件数 汚染残留 戻り汚染
F-ISCO単独 26 6 3
F-ISCO+バイオ 2 2 0
F-ISCO+掘削除去 12 1 1
F-ISCO+揚水曝気 3 2 0
F-ISCO+掘削除去+バイオ 2 1 1
F-ISCO+掘削除去+揚水曝気 1 0 0
揚水曝気単独 2 2 0
合計 48 14 5

注)表中のバイオはバイオレメディエーションを意味する。

化学酸化法の1つであるフェントン反応剤を用いた浄化方法は、原位置へのフェントン反応剤の注入(以下、F-ISCO と記す、Fenton In-Situ Chemical Oxidation の略)を中心に浄化工法として採用実績が増えている。この浄化方法は化学酸化によってベンゼンや油分、VOCs といった汚染物質を確実に分解することから、適切な調査がなされ、適切に設計して施工されれば効果が確実に期待できる原位置浄化方法であることは筆者らが先の報告で述べた2)。表3.1 に示した例では、F-ISCO や揚水曝気を適用してそれぞれ単独の工法で浄化措置を行ったこともあるものの、ここで特筆したいのはこれらの方法に掘削除去、あるいはバオイオレメディエーションを組み合わせた事例もあることである。それぞれの工法がもつ特長を組み合わせることで浄化措置を円滑に進めることができる。ガソリンスタンドにおける汚染濃度の再上昇の原因としてあげられるのが、敷地内の汚染の残留と敷地外からの汚染の戻りである。同表から、組み合わせ工法によって汚染残留や戻り汚染のリスクを大幅に低減できることが伺える。また、かなり汚染濃度が低くなった場合の残留汚染に対する対応としてバイオレメディエーションを組み合わせることで浄化を完了させた事例もある。

表3.2 に浄化措置のタイミングと残留汚染などの件数の関係を示す。同表から解体後に実施された浄化措置は汚染の残留による濃度の再上昇の割合が他のケースと比べて少ないことが分かる。一方でガソリンスタンドを営業しながらの浄化措置では汚染が残留する割合が高いともいえる。

表3.2 浄化措置のタイミングと残留汚染などの件数の関係
対策のタイミング 件数 汚染残留 戻り汚染
営業を継続しながらの対策 17 9 1
廃業後解体前に浄化対策 6 2 0
解体後の浄化対策 25 3 4
合計 48 14 5

表3.3 に調査、評価の方法と残留汚染などの件数の関係を示す。同表から、自ら調査、評価を行ったサイトの汚染残留件数に比べ、他の機関で調査、評価を行ったサイトにおける浄化措置後の汚染残留の割合が高いということがいえる。つまり、調査をおこなった機関が浄化措置を行った方が、現況をよく把握できる、適切な浄化措置を立案できるという点から、適切な措置を実施できるということがいえるのではなかろうか。筆者らは、浄化措置をするに当たり実際のサイトを自らが調査し、よく観察することが浄化措置を成功させる上で大切なポイントであると考えている。しかし、同表において自ら調査した中にも汚染残留が認められる事例もある。営業中のガソリンスタンドの場合、①継続して配管などから漏洩があったケース、②販売室など調査、対策ができない場所に汚染が拡散しているケース、などが原因としてあげられる。営業中の場合、浄化作業スペースや時間に制約を受けたり、施設を損傷することなく浄化することを求められたりすることから、汚染残留箇所に浄化の手が届かないこともあることから、完全な浄化措置を実施するのは困難が予想される。一方、廃業したガソリンスタンド跡地の汚染濃度の再上昇は、過去に撤去されたはずのタンクが残置されたり、廃棄物が埋められたりしていたケースで、浄化前には汚染の原因が不明確であった場合、自ら調査した場合でもこれらの事実を把握できないときは汚染が残留していて濃度が再上昇するケースがある。このようなトラブルについては筆者らが先に報告した事例がある3)

表3.3 調査、評価の方法と残留汚染などの件数の関係
SSの状態 調査、評価の方法 対象件数 汚染残留 戻り汚染
営業中 自ら調査、評価 15 6 1
他の機関で調査評価 2 2 0
廃業 自ら調査、評価 24 1 0
他の機関で調査評価 7 5 4

4.ガソリンスタンド跡地の利用状況

表4.1 に措置後の土地、施設の利用状況を示す。筆者らが行った浄化措置では、そのままガソリンスタンドの営業を継続している事例が35%、浄化後に所有権を売却した事例が8%を占め、つまりこれら浄化措置後も引き続き営業を継続しているガソリンスタンドは対象件数の43%を占める。一方、浄化措置後土地を売却したケースが43%と営業継続とほぼ同率になっているが、ガソリンスタンド施設を解体後、更地にはしたものの売却できずに空き地になっているケースや過去に汚染があったために売却できない、あるいは売値が合わずに売却できないケースが14%程度ある。空き地や遊休地になっているガソリンスタンド跡地の大半は主要都市以外の地方のガソリンスタンドとなっているのも特徴といえよう。

表4.1 措置後の土地、施設利用状況
対策後の土地、施設の状況 件数 %
営業継続 22 34.9
営業継続(所有権譲渡) 5 7.9
売却 27 42.9
空地、遊休地 9 14.3
合計 63 100.0

図4.1 に売却された後のガソリンスタンド跡地の利用状況を示す。ガソリンスタンドは主要幹線道路や交差点などに面しているケースが多く、商業施設としての立地条件が良いことから、コンビニエンスストアーやレンタカーなどの店舗やホテル、オフィスビルとして利用されている。東京都内や大阪市内、名古屋市内などの主要都市に限れば、ガソリンスタンドの面積や周辺建物の状況にもよるが、マンションなどの集合住宅となっているケースが多い。一方、市街地から離れたところや地方では一戸建ての宅地となっているケースが見受けられる。店舗やホテル、オフィスビルなどの場合は敷地の大半は施設や舗装で覆われており、土壌が露出している箇所はほとんど見あたらない。また、ガソリンスタンド跡地に建てられるマンションについても、限られた敷地を覆うように建設されているケースばかりで、客土が施されている外構植栽以外に土壌が露出している箇所はほとんど見あたらない。また吉原らが実施したアンケート調査1)によると、オンサイト処理された汚染土壌サイトでも住宅地として跡地利用されているケースも見受けられることから、ガソリンスタンド跡地でも適切な処置が施されれば宅地など土壌が露出している場所としての利用も十分考えられる。

ガソリンスタンド跡地が土地売却後に問題を抱えた事例として、

建設工事中に土壌で油臭油膜が感じられ、通常の建設発生土として残土処分できない(4件)

建設現場の敷地の溜まり水で油膜が確認され、通常の排水として処分、排水できない(1件)

建設中、油臭による周辺住民からの苦情が寄せられた(1件)

などがあげられる。これらは建設工事中に想定外の費用や労力がかかったことに対して寄せられたクレームで、浄化関係者(発注者あるいは汚染原因者、浄化措置の設計・施工業者)が適切に対応すれば十分に処理できる。

5.浄化措置と原位置浄化の今後のあり方および浄化方法の提案

汚染土壌の処分施設の絶対的な数量不足や環境への負荷の大きさを考慮すると、今後、ガソリンスタンドにおける浄化措置は、掘削除去を中心とした浄化措置から原位置浄化などのオンサイト処理方法へ方向転換してゆかねばならない。そのためには、技術的にいくつかブレークスルーしなければならない点がある一方、基準(値)ばかりに重点を置いた浄化措置から、「汚染土壌による健康被害を防止する」という観点から浄化目標を掲げ、経済的にも環境的にも負荷の少ない浄化措置へ意識を転換する様な取り組みが必要である。ガソリンスタンドの汚染原因物質は限られていること、ガソリンスタンドの立地条件が良さや跡地として利用する上で直接的な健康被害が想定されにくいことの理由から、今後は掘削除去を中心とした浄化措置ではなく、原位置浄化などのオンサイト処理が浄化措置として優先的に適用されうる比率は高いと推察される。特にフェントン反応剤を用いた化学酸化法やバイオレメディエーションなどは海外でもその浄化能力や将来の主たる浄化措置の方法としての評価が高いことから、適用方法や適用限界を明確にし、適用する上での施工上の工夫をすれば、今後これらの方法による浄化措置は増加すると考える。ただ、フェントン反応剤を用いた化学酸化法については、先の報告2)で筆者らが述べたように、フェントン反応剤の原位置浄化のみの対策では適用に限界がある。そこで、この様な課題に対して試験的な取り組みを行っているので、以下に今後のフェントン反応剤を用いたオンサイト処理法について提案をする。

(1) フェントン反応剤の掘削攪拌処理工法

フェントン反応剤が浸透しにくく、拡散しにくい不飽和土層や粘性土層、あるいは浅い所に存在する汚染土などで、攪拌機を用いてフェントン反応剤を混合攪拌する方法が採用された事例もある。米国でもこのような工法が採用され盛んに実施され成果を得ている。ただしこの方法はフェントン反応剤を混合攪拌して土を乱すために土が高含水状態となり、土の支持力が失われるため、処理後に石灰混合処理をして地盤の支持力を回復させる等の方策が必要となる。

(2) F-ISCO+バイオレメディエーション複合工法

ここで紹介する工法は不飽和土層をバイオレメディエーションで浄化した後、飽和土層をフェントン反応剤の原位置注入によって浄化した事例である。図5.1 にフェントン反応剤を注入した後の微生物数(MPN 法による)を示す。同表からフェントン反応剤注入直後に菌数は若干減少するものの原位置微生物量の著しい経時的低下は観測されず、フェントン反応剤原位置注入によるこのサイトの土壌微生物への影響は小さいと推察された。

(3) F-ISCO(高圧噴射攪拌)

この方法は浸透しにくい地層に対して注入ロッド先端のノズルから高圧のフェントン反応剤を噴射して浸透しにくい地層に切れ込みを入れながらフェントン剤を注入する方法である。VOC 等のような粘性土層の上に薄く広がった汚染に対して有効な方法であることが筆者らの試験で分かっている。

【参考文献】

1)

吉原昌宏、他:土地売買時にオンサイト措置が採用された事例に関する検討, 第13 回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション3, No.28, 2007

2)

中間哲志、他:フェントン反応剤を用いた浄化方法について, 第13 回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション3, No.21, 2007

3)

中間哲志、他:汚染現場における汚染の実際と原位置浄化の効果の検証, 第12 回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション4, No.25, 2006

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