土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

含油土壌のフェントン浄化における石油系炭化水素類の分解難易性

(著作者)
  • 大澤 武彦1
  • 中間 哲史1
  • 杉田 和俊2
  • 1株式会社アイ・エス・ソリューション
  • 2株式会社ダイヤ分析センタ-

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1.はじめに

現在では化学酸化剤を利用した土壌中汚染物質の分解技術は原位置化学酸化(In Situ Chemical Oxidation:ISCO)技術として米国では汎用化している。酸化剤としてはフェントン氏試薬(以下フェントン薬剤という)か過マンガン酸カリウムが知られており、その中でもフェントン薬剤が汎用されている。

1998 年には米国環境省(EPA)は”In Situ ChemicalOxidation”1)を、1999 年には米国エネルギ-省(DOE)は“Innovative Technology Fenton’s Reagent”2)を出し、フェントン酸化法のメリット、技術の確立性、コストについて技術評価をしている。我が国では措置技術の一つとして原位置フェントン酸化法が2003 年の「土壌汚染対策法に基く調査及び措置の技術的手法の解説」及び2006 年の「油汚染対策ガイドライン-油含有土壌による油臭・油膜問題への対応-」の中で紹介され、現在では浄化技術として商用化されている。

フェントン反応は過酸化水素とFe(Ⅱ)との反応の結果生じたヒドロキシルラジカル(・OH)が反応開始オキシダントとなり、有機化合物との連鎖反応が起き、最終的には、炭化水素化合物の場合には炭酸ガスと水に、有機塩素系VOC では炭酸ガスと水及び塩化水素になるといわれている。フェントン反応に関する基礎的な研究は過去において廃水処理分野において精力的行なわれていたが、我が国においては土壌中の有機化合物の分解に関する応用研究例は多いとはいえない。

筆者はガソリンスタンド跡地土壌の油分に対してフェントン酸化法を適用するに当ってのトリータビリティー(以下TR という)試験において、フェントン反応による油分の分解性は、土壌の性質の違い、対象油分の濃度の違いばかりではなく、油種によってもフェントン分解難易性があるのではないかという考えを持っている。

例えば、軽油を構成する炭化水素群の種類はアルカン(飽和炭化水素とも言い、この中には直鎖と分岐炭化水素がある)、アルケン(不飽和炭化水素)、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、多環芳香族化合物である。飽和炭化水素は炭素・炭素間は単結合で不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、多環芳香族は炭素・炭素間の結合は2重結合であるなど両者の構造は異なる。その上、油種間で単結合の炭化水素と2重結合を有する炭化水素の構成比率が異なる。フェントン反応により生成されたヒドロキシルラジカルの反応性は炭化水素群間の構造、その構成比率と関係し、これが油種に対するフェントン分解の難易性に関与する可能性があるとの考えから本研究をおこなった。この関連性を検証するために、軽油に含まれている炭化水素群に属する炭化水素化合物の単一存在状態におけるフェントン分解性を実験的に確認し、油種のフェントン分解性について評価した。

2.実験

2.1 実験の構成

2.2 実験の方法

2.2.1 試薬

フェントン分解の基礎的な検討を行うために、ガソリンや軽油に含まれると考えられる成分について、標準品を用いて分解の可否・程度について検討した。用いた標準品は直鎖アルカン(飽和炭化水素C 数)としてオクタン(C8)、デカン(C10)、ドデカン(C12)及びエイコサン(C20)、分岐アルカン(C 数)として2,2,4-トリメチルペンタン(iC8)、脂環式炭化水素として1,6-ジメチルシクロヘキサン及びn-ブチルシクロヘキサン、芳香族炭化水素としてエチルベンゼン(以下EtBz と略す)及びn-ブチルベンゼン(以下BuBz)、多環芳香族化合物(PAH)としてナフタレン(以下NA)、アセナフテン(AC)及びベンゾ[a]ピレン(BaP)である。これらの標準品をアセトン(残留農薬試験用)に溶解し、約1000mg/mL の標準溶液を作成した。同様に、ガソリン、軽油及びエンジンオイルについては市販品を購入し、アセトンに溶解し、約1000mg/mL の標準溶液を作成した。

検証実験として、実際に油汚染を受けた土壌(SS サイトの土壌)を採取し、TR 試験用試料とした。

フェントン反応には10%クエン酸水溶液、28%硫酸第一鉄水溶液及び30%過酸化水素水を用いた。10%クエン酸水溶液はクエン酸(試薬特級)を用いて調製した。28%硫酸第一鉄(FeSO4)水溶液は硫酸第一鉄七水和物(試薬特級)を用いて実験の都度、調製した。過酸化水素は30%の原液をそのまま使用した。標準品及び石油製品のTR 試験には、ガラスビーズ(直径0.1mm)を土壌の代替品として用いた。実証試験における土壌中TPH の抽出時の脱水には無水硫酸ナトリウム(試薬特級)を用いた。

各実験におけるTPH 類(GRO:Gasoline Range Organic, DRO:Diesel Range Organic, RRO:Residual Range Organic)、標準物質及び石油製品の抽出には二硫化炭素(作業環境測定用)を用いた。

TPH 類、標準物質及び石油製品の測定にはGC-FID(Agilent 社製、GC6890)、キャピラリーカラムにはBPX-5(SGE社製、10m×0.1mmID×0.1umFT)を用いた。

2.2.2 トリータビリティー(以下TR という)試験条件

石油製品及び標準品のTR 試験には基質(石油製品あるいは標準品)として0.1mg から50mg を用い、クエン酸酸性にした後、Fe(Ⅱ)/H2O2=1/20~1/10 の割合になるように、それぞれの試薬を添加した。添加後、4 時間から24 時間の静置を行い、二硫化炭素1mL で抽出を行った。

実証試験におけるTR 試験には土壌5~10g を用いて、クエン酸でpH3 程度に調整後、過酸化水素1~2%、Fe(Ⅱ)/H2O2=1/20~1/10 の条件になるように各試薬を添加した。実証試験では初期添加6 時間後に同量の過酸化水素及び硫酸第一鉄水溶液の再添加を行うことにより、フェントン分解の促進を図った。

2.2.3 試験操作手順

標準物質及び石油製品を対象としたTR 試験の手順を図-2 に、実証試験における土壌のTR 試験の手順を図-3に示す。

2.2.4 TPH 測定

TPH の測定はGC/FID を用いた。キャピラリーカラムには微極性の液層を選択し、ある程度の分離を維持し、分析時間の短縮を図るため、Fast GCによる測定を行った。分析装置及びカラムオーブンの昇温条件等を表-1 に示す。標準物質として市販のガソリン及び軽油を用いて定量を行った。定量範囲はおよそ10~1000mg/kg であった。

3.結果及び考察

1)ガソリン、軽油およびエンジンオイルのフェントン分解性

市販のガソリン、軽油および潤滑油の代表としてのエンジンオイルのフェントン分解率はガソリンで74%、軽油で4%エンジンオイルではほとんど分解が確認されなかった(図-4)。試験に供したガソリン、軽油、エンジンオイルを構成する炭化水素を炭素数(以下C 数という)は、ガソリンのC数範囲はおおよそ6~12、軽油は10~28、エンジンオイルは20 以上であり、それら油の炭化水素組成について、ガソリンは軽油に比べ芳香族炭化水素を含む割合が多くアルカンおよびアルケン炭化水素が少ないと言われており(表-2)3)、4)エンジンオイルは飽和炭化水素から構成されていると言われている。以上のことから、上述の3種の油に対するフェントン分解性の違いは構成される炭化水素の炭素数および芳香族化合物を含む割合によることが示唆された。ガソリンのフェントン分解後のGC-FID クロマトグラムを図-5 に示す。図-5 からC 数の小さい炭化水素を分解していることが示唆される。

2)燃料油に含まれる炭化水素化合物のフェントン分解性

1)の推論を明らかにするために、軽油に含まれている異なる炭素数で異なる構造の炭化水素化合物を選択し、それぞれに対してフェントン分解性を確認した。選択した炭化水素化合物を表-3 に示す。以下にそれぞれの特性ごとに分解性を評価した。

① 構造の違い

C 数が8の化合物群について図-6 に示す。図-6から、フェントン分解率は15~20%であり、直鎖アルカン、分岐アルカン、環式アルカン、アルキルベンゼン間では分解率において大きな差は 認められなかった

② C 数の比較

直鎖アルカン類についてC の数による比較を図-7に示す。図-6 ではC 数が8のオクタンで若干分解が見られたが、そのほかのアルカンではほとんど分解が見られなかった。

③ アルカンと多環芳香族(PAH)の比較

同じ炭素数の直鎖アルカンと多環芳香族(PAH)での比較を図-8 に示す。図-8 から、ナフタレン、アセナフテンなどのPAH 類の分解率が高いことが認められた。このようなPAH 化合物で分解率が高いのは、二重結合を有しているという構造的な違いもあることが考えられる。しかし、BaP はほとんど分解が認められなかった。この理由は、ナフタレンの水溶解度が分解率の低かった化合物に比べて大きいことが考えられる(水溶解度:n-デカン:0.052g/m、n-ドデカン:0.0034g/m、ナフタレン:31.7g/m、ベンツ[a]ピレン:0.0038g/m、アセナフテン:データなし)。ある程度の水溶解度がないとフェントン薬剤との反応が難しくなるとと考えられる。

④ 環式アルカンとアルキルベンゼン

環構造であるが単結合の環式アルカンと二重結合を有するアルキルベンゼンにおける比較を図-9 に示す。図-9 では、アルキルベンゼンの分解率が若干高い結果となった。また、環式アルカ ン・アルキルベンゼンともにC 数の少ないほうが分解率はわずかではあるが高いことが認められた。

3)フェントン分解性に対する総括的評価(まとめ)

以上のガソリン、軽油およびエンジンオイルに関するフェントン分解性更に炭化水素化合物単品に対するフェントン分解性に関わる試験結果から、燃料油に対するフェントン分解の難易性には炭化水素化合物の炭素数および炭化水素の構造が密接に関係していることが示唆された。具体的には、炭化水素化合物ではC 数10 以下の直鎖アルカン、ベンゼン、アルキルベンゼンなどの芳香族化合物の含有量が多いほどフェントン分解性が高いことが認められた。これがガソリンの分解性が高くなる要因であると考えられる。A. Goi 等5)はディーゼルオイルに対しフェントン分解を行い、炭化水素のC 数範囲で分解率が異なりC数が12~20範囲の方がC数20~28よりフェントン分解率は高いことを報告しており、本研究で明らかにした分解性に関わる要因で説明が出来ると考えられる。

4)フェントン分解試験の事例

SS サイトの土壌中のTPHに対するフェントン分解トリータビリティー試験の2事例を紹介する。2つ事例ともガソリン範囲(GRO)のTPH において高い分解率を示していた。しかし、ディーゼルオイル範囲(DRO)は6時間では分解が認められず、さらに初回と同一量、同一濃度のフェントン薬剤を添加した。事例Aでは再添加後、GRO のほとんどとDRO のTPH の一部の分解が認められた(図-10)。しかし、事例Bでは1 回目のフェントン試薬の添加によりGROの分解が認められ、追加添加によりさらにGRO の分解の促進が認められたが、DRO についてはわずかな分解しか認められなかった(図-11)。DRO のTPH は分解し難いと述べてきたが、繰り返し新鮮なフェントン薬剤と接触させることによりフェントン分解を進めることが可能であることを示唆している。

以上のことから、実際のSS サイトの土壌においてもDRO においてC 数が12~20の方が20~28より分解性が高いことが実際の土壌中のTPH についても確認された。

4.おわりに

昨今、工場やSS 跡地の土壌に含まれる油の浄化に対し、フェントン薬剤による酸化分解する方法が適用されること多い。フェントン薬剤は強力な酸化剤で多くの有機化合物を分解するが、油種によっては浄化し難いことがある。本研究では分解の難易性は油中に二重結合を有する芳香族化合物を多く含む、炭素数の少ないアルカン(飽和炭化水素)及び環式アルカンを含むことなど、油を構成する炭化水素の種類と構造の違いに起因するであろうことを実験的に確認した。

[参考文献]

1)

U.S. Environmental Protection Agency(1998)EPA542-R-98-008 In Situ Remediation Technology: In Situ Chemical Oxidation

2)

U.S. Department of Energy(October 1999)Innovative Technology Fenton‘s Reagent

3)

Wikipedia Diezel http://en.wikipedia.org/wiki/diesel

4)

レギュラ-ガソリンと、ハイオクガソリンの違い http://www.chemistryquestion.jp/situmon_59_gasoline_octane.html

5)

A.GOI、et.al 2006:Ozonation and Fenton Treatment for Remediation of Diesel Fuel Contaminated Soil Ozone Science and Engineering .28 37~46

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