土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

埋設配管等に与えるフェントン氏試薬の腐食性評価に関する実験的検討

(著作者)
  • 大澤武彦
  • 小林裕一
  • 中間哲志
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

昨今,町を走っていて,ガソリンスタンド(以後SSと言う)が閉鎖されている光景を目にすることがあり,それは,平成7 年に59990 軒あったSSの内,毎年1000 軒程が営業を止め,平成17 年にはその数約47,600 軒1)に減じていることにあるのであろう.

SS を閉鎖しその土地を改変する場合,土壌汚染の調査を義務付けている自治体もあるが,現在の土地取引の商習慣では必ず汚染調査が行われている.その汚染調査においてベンゼン汚染が判明することは少なくない.

閉鎖SS で汚染が判明することがあるのであるから,稼動中のSS においても汚染問題が内在していることは想像に難くない.

最近では,企業のコンプライアンス意識の高い石油元売企業各社は自社直轄運営中のSS の土壌汚染のリスク管理に深い関心をもち,全社を挙げSS の汚染調査を行っている.その過程で汚染が判明した場合には,汚染が与えるリスクの程度に応じて汚染の除去を行っている.

営業中SS での汚染除去であるので,汚染土壌の掘削除去の適用は難しく,原位置汚染除去技術の適用ということになる.原位置汚染除去技術となれば,土壌ガス吸引法,揚水曝気法があるが,汚染除去が長期間になることもあり,最近ではフェントン原位置浄化法(以下F-FISCO:Fenton-In Situ Chemical Oxidation という)は汚染除去を短期間で出来るなどの長所から,SS の浄化に適用されつつある.

営業中SS にF-FISCO を適用した場合に懸念されることは,フェントン氏薬剤という酸化剤がSS の埋設配管やタンクなどの鉄製施設に触れた場合の金属腐食への影響である. そこで本研究では,フェントン薬剤が鉄の腐食へ与える影響を原位置浄化技術の視点から実験的に検討した.

2.実験の方法

2.1 腐食試験の概要

腐食試験の方法は営業中SS においてベンゼン土壌汚染があり,その除去に対してF-FISCO を適用することを想定した.その浄化においては,まずフェントン薬剤が注入できる注入井戸を浄化範囲内に設置し,その井戸を介してフェントン薬剤を注入する.標準的なフェントン薬剤の注入回数は20~25日毎で3 回とする(図‐1).ここでいうフェントン薬剤とは過酸化水素水,2 価の鉄として硫酸第一鉄溶液及び反応環境を酸性に調整するためのクエン酸溶液とする.

本試験では,フェントン薬剤を3 回に分けて注入することに合わせ,腐食試験溶液を20 日毎に2 回交換することにした.

図‐1 標準的原位置フェントン薬剤注入フロー埋設状態の配管はその機能を保持するための強度或いは肉厚が問題となるので腐食性は全面腐食を想定した腐食試験から得られた腐食速度(1 年間での腐食の深さを表す腐食侵食度 mm/年)で評価した.その試験の概要を図‐2 に示す.

腐食試験は大きく腐食促進試験と腐食抑制試験から構成され,その目的は前者からはフェントン反応環境下に於ける鉄の腐食性に関する知見を後者からは腐食を抑制する方法とその効果を実験的に確認することである.

2.2 供試材料

試験片はSGP管よりフライス加工により所定の大きさに削り出し,全面研削研磨したものを用いた.試験片の1 個は40×20×3 mm(総表面積は19.6 cm2)で,それを3 個の試験片が接触しない保持方法により試験溶液に浸漬した(写真‐1,図‐3).

2.3 腐食試験溶液と試験の操作・手順

2.3.1 試験溶液の調製条件

実験No.1~8 の腐食試験溶液量は1200 mlで,腐食試験で一般的な比液量を試験片の表面積1cm2あたりの試験溶液を20 mlとして計算した2)

腐食侵食度は浸漬前及び60 日浸漬後,腐食生成物を除去した試験片の寸法及び重量を計測し,1.3.3 に記した計算法から算定した.

1) 腐食促進試験(表‐1.1)

実験No.1 はフェントン薬剤成分のうちFe(Ⅱ)を添加していない実験系である.試験片浸漬期間は60 日で,その間の試験溶液の交換はしていない.

実験No.2~5 はフェントン薬剤の過酸化水素の濃度は2%, 4%及び6%とし,Fe(Ⅱ)と過酸化水素のモル比は1:10 とした.

試験片浸漬期間は60 日とし,その間20 日目及び40 日目に開始時と同一条件の溶液と交換した. これは標準的なフェントン薬剤注入頻度を20~25 日間隔(図‐1)で行なっていることに対応させている.尚No.3 は60 日目に腐食生成物を除去し,寸法,重量を計測後,溶液をCa(OH)2で中和し,試験片を中和溶液に再度60 日間浸漬させた.再浸漬期間の試験をNo.8 実験とした.

実験No.4 は20 日及び40 日目に溶液を交換し60 日目で寸法,重量を計測後,60 日における溶液のまま更に60 日浸漬を継続している.

2) 腐食抑制試験(表‐1.2)

実験No.6, 7 は60 日までは試験溶液を20, 40 日の2 回交換,60 日目に試験片を取り出し,腐食生成物を除去後寸法,重量を計測した.浸漬容器中の溶液は炭酸ナトリウム或いは水酸化カルシウムで中和をし,この中和溶液に腐食生成物を除去及び計測後の試験片を60 日間浸漬した.そして中和溶液浸漬60 日後の試験片の腐食生成物を除去後,寸法,重量を計測した.

2.3.2 腐食生成物の除去方法

試験溶液に60 日及び120 日浸漬後,試験片を取り出し,腐食生成物の除去をした.試験片をクエン酸水素二アンモニウム水溶液(10%wt)に浸漬して,スタ-ラ-で撹拌して腐食生成物を除去する.腐食生成物除去の途中で歯ブラシを使い,生成物を擦り取り,再びクエン酸水素二アンモニウム水溶液へ浸漬させる.これを繰り返し,生成物を除去し,最後にアセトンで脱脂をした.

2.3.3 腐食速度(腐食侵食浸食度)の計算法3)

腐食速度は単位時間当たりの侵食深さで表す侵食度(mm/年)で表示することにする.侵食度は浸漬試験の試験片の寸法及び重量変化から下記の式より算出した.

3.結果及び考察

3.1 腐食性の評価

侵食度は異なる腐食環境におかれた同一材料の試験片の腐食速度を相対評価することができる.ここでの侵食度は全面腐食を想定した実験より求めたものであるので,孔食,粒界腐食などの局部腐食にかかわる情報とはならない.

3.1.1 腐食速度(侵食度)

表‐1.1 及び1.2 に対応する腐食試験溶液組成(実験No.)ごとについての腐食速度を表‐2 に示す.

試験片を異なる腐食環境に60 日間浸漬した場合を「腐食促進試験期間」とし,引き続き腐食促進試験溶液をpH 調製し,60 日間浸漬した計120 日間を「腐食促進+腐食抑制期間」とし,「腐食抑制試験期間」とはpH 調整した溶液に浸漬させた60 日間をいう(表‐2).

実験No.2, 3, 4 及び5 は試験片を20 日毎に新しいフェントン溶液に浸漬するという過酷な腐食環境である.

No.1 のH2O2濃度は4%でpHは酸性であるがFe(Ⅱ)が添加されていないのでフェントン反応は起こっていない.それに引き換えNo.3 のH2O2濃度はNo.1 と同じであるがFe(Ⅱ)が存在しているためにフェントン反応が起こっており且つ開始時を含め3 回新しいフェントン溶液と接触している.この侵食度の極端な違いはフェントン反応の結果生ずるヒドロキシルラジカルをはじめその他のイオン種が影響していると考えられる.

No.2~5 ではH2O2の濃度が2%, 4%, 6%と増加する腐食環境では腐食侵食度はおおよそH2O2濃度の増加に対応した腐食侵食度の増加が認められる.これはフェントン反応が腐食進行に関与していると考える.

No.2~5のフェントン反応ではFe(Ⅱ)/ H2O2のモル比が1/10となるように硫酸第一鉄溶液を添加しているので硫酸イオン濃度はH2O2濃度増に対応してNo.2<No.3=No.4<No.5 の順に高くなっている.

硫酸イオンの濃度増に対応した腐食侵食度はNo.2<No. 3=No.4<No.5 の順に増加している.

腐食に対する溶存酸素の影響を表‐2 と表‐3 からみると,腐食促進期間中では浸漬溶液中の溶存酸素と腐食浸食度との関連は明確には認められない(表‐3).むしろ腐食侵食度にはpH の影響がある(表‐2,表‐4).

pH を中和した腐食抑制期では溶存酸素が0.5 mg/l 以下となっているのは,中和操作時に発熱したため,酸素が系外に移行した結果と思われる.

No.6, No.7 及びNo.8 の浸漬溶液を中和したケ-スでは腐食侵食度は減少している.

3.1.2 Fe(Ⅱ)モルと腐食速度の関係

フェントン薬剤溶液浸漬では腐食侵食度はH2O2の濃度に関係していることは2.1.1 で述べた.この場合のH2O2濃度は反応開始時或いは溶液入れ替え初期時の濃度であり,H2O2はフェントン反応の初期過程で大半は消費され,若干量は自己分解するため,少なくとも24 時間以降ではH2O2としては存在しないであろう.それに引き換えフェントン反応においてFe(Ⅱ)触媒として添加する硫酸第一鉄の硫酸イオンは消費されることも,分解されることもなく,浸漬中その濃度は変化することなしに存在する.

そこで,硫酸イオンを腐食のパラメーターとすると,硫酸イオンモル濃度に対する腐食侵食度の関係には直線関係が認められた(図‐3).本図において許容できる腐食侵食深さ(mm/年)を指定すれば,そのときの硫酸イオンのモル濃度が分かると同時にFe(Ⅱ)及び過酸化水素のモル濃度が分かる.図‐3 の関係は管材の腐食を考慮する場合の注入フェントン薬剤の濃度設計に応用できる.

3.2 アルカリ環境と腐食抑制効果

防食技術において,腐食を抑制するために腐食環境をアルカリ環境へ変化させることが一般に行われている.

そこで,本研究においても酸性環境にあった試験片をアルカリ環境とした場合の腐食進行(表‐2)を見ると,実験No.8 ではフェントン溶液環境下で腐食侵食度が1.15 mm/年からアルカリ環境とすることで0.05 mm/年となっている.その他のケ-スでも腐食侵食度(侵食深さ)は激減することが認められた.

実験No.6 及びNo.7 では腐食侵食度を腐食促進期間と腐食抑制期間を通し算定しているが,腐食抑制期間のみの侵食度は減少していると推察される.

フェントン薬剤注入後,水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムで土壌環境を中和することは防食上有効である.

3.3 防食上安全なフェントン薬剤の濃度条件

原位置フェントン浄化においては,フェントン薬剤が埋設配管などと接触しないように注入井戸を配置すること,実際の浄化工事に際しては薬剤が埋設配管に到達しないような注入量及び薬剤濃度を適正に管理することには論をまたない.

実際のガソリンスタンドの埋設配管は水中に漬かっているのではないので,本試験の浸漬状態での侵食度(mm/年)は過酷な数値と思われるが,埋設配管にフェントン薬剤が接触しても安全なH2O2濃度を試験結果に基づいて試算をする.

試算するに当たっての条件を「腐食は均一腐食」,管材はSGPで管厚は3.8 mm」,「腐食許容厚さは2.7 mm(管厚の70 %)」「耐用年数を20 年」とすると,許容される年間あたりの腐食深さは0.13 mm(0.13 mm/年)となる.この腐食侵食度0.13 mm/年を図‐3 の硫酸イオンのモル数に対比させると,0.14×10-4モルとなる.この値をH2O2濃度に対応させると約0.5%となる.

表‐5 で示すようにH2O2が0.5%で地下水中のベンゼンを分解することが出来ることをトリ-タビリティ-試験で確認している.

これらの知見よりH2O2の濃度は0.5 %,Fe(Ⅱ)/H2O2のモル比は1/10 以下にフェントン薬剤の濃度条件とすれば,既に腐食が進行し,孔が開く寸前の埋設配管でない限り,フェントン薬剤と接触することにより即座に配管に孔が開くということは無いと考える.

4.おわりに

営業中のSS においてF-ISCO を適用する場合,フェントン薬剤注入による埋設配管の腐食防止には注入井戸の配置設計や薬剤の濃度設計などの設計時点で配慮することおよび施工時においては配管に薬剤が接触しないような注入作業をすることがもっとも大事なことである.

埋設配管周囲のフェントン薬剤の濃度がH2O2は0.5 %,Fe(Ⅱ)/ H2O2モル比が1/20 以下となるような注入をすれば,何らかの原因でフェントン薬剤が配管に接触したとしても即座に配管の腐食は進行することは無いと考える.

更に,フェントン薬剤による腐食を抑制するには薬剤を注入した土壌をアルカリにすれば腐食は十分抑制することが可能であることを示した.

フェントン反応による有機物の酸化分解はFe(Ⅱ)とH2O2の反応から生成されたヒドロキシルラジカルを開始剤とする複雑な連鎖反応である.本研究はこの複雑なフェントン反応系に電気化学的反応である金属腐食を考えなければならない非常に複雑すぎる系が対象であるため,試験容器の中で起こっていることはブラックボックスと考えざるを得ず,試験の結果とフェントン反応系で起こっていることとの因果関係は解明できていない.

[参考文献]

1)

1.(社)全国石油協会 都道府県別給油所数の推移 http://sekiyu.or.jp/topics/data_a.html

2)

腐食防食協会:腐食・防食ハンドブック,丸善,pp569~571

3)

北村 義治 鈴木 昭夫(1997):地人館,pp116~117

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