土壌汚染調査・浄化 株式会社アイ・エス・ソリューション

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発表論文

フェントン反応剤によるガソリンスタンドのベンゼン・油汚染浄化

(著作者)
  • 中間哲志
  • 山内 仁
  • 草場周作
  • 安原雅子
  • 株式会社アイ・エス・ソリューション

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1.はじめに

本報告では、ベンゼンと油で汚染された土壌の化学酸化法(フェントン反応剤)による原位置浄化工法とその実施例を紹介する。この方法は米国で広く用いられている技術である。現在、首都圏を中心として全国各地でガソリンスタンドにおける油汚染が関係企業の自主的な調査により顕在化してきている。筆者らは、ベンゼン、油で汚染された土壌、地下水汚染の浄化方法としてフェントン反応剤(過酸化水素水+鉄塩)を原位置に注入し、浄化の実績を上げた。そこで、フェントン反応剤による室内試験結果と実例を紹介しつつ、フェントン反応剤の課題について記す。

2.フェントン反応剤による原位置浄化法の概要

2.1 背景

昨今、ガソリンスタンドの経営母体となる企業を中心として、自主的に土壌、地下水の油汚染調査を実施しているところが増えてきている。その調査のなかで営業開始日の古い店舗などでベンゼンや油分による土壌地下水汚染が認められたケースも報告されている。この汚染の主な原因として、①タンク、配管施設の老朽化に起因する漏洩、②油の地下浸透桝の存在(古いスタンドでは地下に油混じりの水を地下に浸透させていた)、③ベンゼンを含んだガソリンの過去の使用履歴、などがあげられる。ガソリンスタンドにおける汚染の状況としては、1) ベンゼン、油の汚染レベルが高く、4条調査と法に準拠した対策が求められるサイト、2) 敷地外への漏洩はないものの敷地内のベンゼン、油汚染のレベルは高く、将来的に敷地外への拡散が懸念されるサイト、3) 敷地外への漏洩はなく敷地内のベンゼン汚染は軽微であるが、油による汚染が顕著なサイト、4) 敷地外への漏洩はなく、ベンゼン、油ともに敷地内の汚染が軽微なサイト、など大きく4種類に分類できる。このうち1)、2)については早急な対策が求められるケースが多い。ガソリンスタンドは商業上の理由で立地条件が良く、その地区の幹線道路に面しているところがほとんどで、ガソリンスタンド廃業後も土地の売買契約が短期に決まるところが多い。そのため、汚染の浄化も短期間で完了することが求められ、また市街地の狭い箇所での浄化施工が求められる。これまで揚水曝気やバイオレメデーションなどの浄化対策工事が行われてきたが、揚水曝気、バイオレメデーションともに浄化期間の長くなるケースが多く、揚水曝気は土壌の浄化が困難なため、油分の土 粒子への吸着などの問題から浄化効果があがっていないケースが多い。そのため、土壌、地下水ともに浄化が可能で、短期間での浄化と広い作業スペースを必要としない浄化が可能な工法が求められている。このようなガソリンスタンドにおける浄化対策のニーズを背景として、土壌中の油が分解でき、且つ短期間の浄化が可能で、複雑な工事を必要としないフェントン反応剤を用いた原位置浄化は有効であると筆者らは考えている。

2.2 フェントン反応剤とは

フェントン反応剤を原位置に注入する汚染土壌、地下水の浄化方法は、米国や欧州のサイトで広く適用され、多くの実績をあげている。フェントン反応剤を用いた浄化は、過酸化水素水(主剤)と二価の鉄塩水溶液(助剤)を汚染された地盤中に注入し、原位置で酸化力の強いヒドロキシルラジカルを発生させ、油分あるいはベンゼン、TCEなどの揮発性有機化合物類(以下、VOCs と記す)を酸化分解する方法で、水処理で広く用いられている。

  • H2O2 + Fe2+ → Fe3+ + OH + OH・
  • H2O2 + Fe3+ → Fe2+ + H+ HO2
  • RHX + H2O2 → H2O + CO2 + H+ + X

2.3 フェントン反応剤の注入

フェントン反応剤には、過酸化水素水(12%)、硫酸第一鉄七水和物水溶液、またpH調整剤として食品添加剤を用いた。フェントン反応剤の注入では、①反応過程で大量のガス(水蒸気、二酸化炭素、酸素)が発生するために地盤中への注入が難しいこと、②フェントン反応剤の反応が急激に起こることから浄化される範囲が局所的な部分に限定されること、また、③特に有機物を含む粘性土などでは広範囲な浄化が困難となること、等が課題として予想された。しかし、これらの問題に対し、①については注入する薬剤の注入順序や注入時間、薬剤の濃度を工夫することで対応し、②、③についてはハイドロフラクチャー法を応用した地盤に砂層を形成する手法(プロパゲーション工法)1)を適用したり、注入井戸の本数を密に配置したり、繰り返し注入を行うことで対応した。特に③については、プロパゲーション工法により薬剤との接触面積を増やした上で繰り返し何度も反復注入することで効果を上げることができた。

3.実施例

フェントン反応剤を用いた浄化対策は、これまでに十数ものサイトで浄化実績をあげている。ここではそのうちの2つのサイトについて浄化対策の事例を紹介する。

3.1 サイトA

(1)汚染の状況

このサイトは、営業開始日が1986 年以前の現在も営業中のガソリンスタンド(以下、GS と記す)で、国道沿いの延長40m×奥行き20m=面積800m2の概ね長方形の敷地であった。詳細調査では、汚染範囲、汚染源の推定を行うための土壌ガス調査、汚染原因と推定された地点の土壌のベンゼン濃度測定、地下水のTPH分析を実施した。図-1に地質断面図を、表-1に詳細調査時の土壌のベンゼン濃度の測定結果を、表-2にTPH分析結果を示す。当該サイトでは汚染原因を特定する目的で配管検査も実施しており、通常、GS で実施される定期的な配管検査より詳細なスペックで配管検査を実施した。

詳細調査および配管検査の結果、給油装置(計量機)に向かう配管からの油の漏洩とガソリンタンクからの油の漏洩が汚染源で、漏洩したガソリンによるタンクのアスファルト被覆材の溶けだしも汚染の原因であることが明らかとなった。

(2)実施した浄化対策

浄化対策は、汚染原因とされた給油装置周辺および埋設タンク周辺へのフェントン反応剤の注入+バイオレメデーション促進材(ORC:酸素除放材)の注入を実施した。このサイト、GL-3.0m ~GL-4.3m が礫層となっており汚染の敷地外への漏洩が懸念されたため、フェントン反応剤の注入(化学酸化剤による分解)により短期間で汚染物質の濃度を低減し、その後に汚染部周辺の土壌 から溶けだしてくる油分や残留油分はバイオレメデーションによる生物分解で対応することとした。フェントン反応剤は浄化後のベンゼン濃度を確認しつつ、フェントン反応剤の設計量を修正しながら、概ね1ヶ月の間隔で3回繰り返して注入した。

(3)浄化の結果

フェントン剤注入前と注入後の地下水のベンゼン濃度の推移を表-3に示す。第1回目の注入直後には地下水のベンゼン濃度は大幅に低減していることが分かる。第3回注入後はほぼ基準値に達しているが、若干の汚染の残留も認められる。フェントン反応剤注入から6ヶ月後にバイオレメデーション促進剤を注入し、現在、経過観測を実施している。

3.2 サイトB

(1)汚染の状況

このサイトは、営業開始日が1986 年以前の廃業した後のGS で、縦12m×横16.5m=面積約200m2の概ね長方形の敷地であった。詳細調査では、汚染範囲、汚染源の推定を行うための土壌ガス調査、汚染源と推定された地点の土壌、地下水のベンゼン濃度と油分濃度の測定、を実施した。図-2に地質断面図を、表-4に詳細調査時の土壌のベンゼン溶出量の測定結果を、表-5に土壌の油分含有量の測定結果を示す。なお、土壌中の油分は、四塩化炭素によって抽出した。土壌ガス調査の結果、調査を行った10 地点のうち1地点において土壌ガス濃度が高い値で検 出された。この地点の地下水のベンゼン濃度は2.0mg/L で、盛土部分の土壌からもベンゼンの溶出量が基準値を超えていた(表-4参照)。詳細調査の結果、ガソリンの地下タンクからポンプ室へ向かう配管からの油の漏洩と漏洩したガソリンによるタンクのアスファルト被覆材の溶けだしが汚染の原因であることが明らかとなった。また、詳細調査に先立って実施したフェーズ1調査から、当該敷地には過去に地下浸透桝が設置されていた履歴があることが分かっており、これも汚染の原因であると推察された。

(2)実施した浄化対策

浄化対策は、掘削除去+汚染原因とされた配管周辺および地下浸透桝があった地点へのフェントン反応剤の注入を実施した。表-6にフェントン反応剤による浄化のためのトリータビリティー試験結果を示す。トリータビリティー試験の手順を以下に示す。

1)

検水100ml-をサンプル瓶に入れ、pHを調整する。

2)

過酸化水素水31%溶液を所定量添加する。

3)

硫酸第一鉄溶液を所定量添加し、計時を開始する。

4)

直ちにテフロンバッグ風船付きのキャップで密栓する。

5)

30℃の恒温槽に入れ定期的に攪拌し、反応させる。

6)

所要時間の後に反応容器を1 分間振とうする。

7)

振とう後、恒温槽中で2 分間以上静置する。

8)

ヘッドスペースガスをGC/PIDで測定する。

トリタビリティー試験の結果から、室内の試験では添加後1時間でベンゼン濃度は基準値以下になることが分かる。

このサイトは、表層~GL-1.0mの浅い深度で油分が検出されていたため、が礫層となっており汚染の敷地外への漏洩が懸念されたため、油分が不検出となるGL-2.0mまでは掘削除去し、地下水位下のベンゼン汚染を対象としてフェントン反応剤の注入を実施した。フェントン剤は浄化後のベンゼン濃度を確認しつつ、フェントン反応剤の設計量を修正しながら、概ね3週間の間隔で3回繰り返して注入した。

(3)浄化前後の結果比較

フェントン剤注入前と注入後の地下水のベンゼン濃度の推移を表-7に示す。第1回目の注入直後には地下水のベンゼン濃度は大幅に低減していることが分かる。第2回注入前にベンゼン濃度の再上昇が見られるものの第3回注入後は基準値をクリアした。掘削除去も完了し、終了判定のためのチェックボーリングでも浄化が完了したと判定された当該サイトは、土地の売買契約が成立した。

3.3 まとめ

サイトAとサイトBの実施例の浄化結果についてまとめると、

汚染源、汚染原因が明確になっており適切にフェントン反応剤を注入できれば、フェントン反応剤注入による浄化方法(化学酸化法)は短期間で浄化効果を上げることができる。

高濃度のベンゼン、油汚染は、1回目の原位置注入で汚染濃度を大幅に低下させることができる。

土壌に(吸着などにより)残留していた汚染が地下水の汚染濃度を再上昇させることも考えられることから、1回のフェントン剤注入では基準値をクリアできない場合があるため、複数回の注入が望ましい。

フェントン反応剤注入による原位置浄化対策だけではなく、バイオレメデーションや掘削除去、あるいはその他の原位置浄化対策を組み合わせることで、より確度の高い浄化対策が行うことができる。

ということが言える。フェントン反応剤は、過酸化水素水に鉄を加えることで原位置にて酸化力の強いヒドロキシルラジカルを発生させ、油分あるいはベンゼンなどの汚染物質を酸化分解する浄化方法であるが、過酸化水素水の反応が早く、そのため持続性がなく、注入が難しい。そのため実施工では、注入する薬剤の注入順序や注入時間、薬剤の濃度をコントロールしたり、ハイドロフラクチャー法を応用した地盤に砂層を形成する手法(プロパゲーション®工法)を適用したり、注入井戸の本数を密に配置したり、あるいは繰り返し注入を行うことで対応することができた。

4.おわりに

フェントン反応剤を用いたベンゼン、油汚染土壌の浄化実績の蓄積により、その浄化効果について十分な手ごたえを感じている。特に地下水については、注入を適切に行うことで、確実に且つ短期間で浄化することが可能であることがことが分かった。本報では触れなかったが、VOCs の汚染土壌でも浄化の効果が確認できている。一方で、フェントン反応剤はその反応速度が速いことから、以下のような課題があることも明らかとなった。

注入井戸周りの充填が十分でないと、井戸周りから注入薬剤が発生ガスとともにリークし、十分に浄化剤の浸透させることができない。

過酸化水素水の反応が著しく早いため、分解反応が長続きしない。そのため汚染源が別な箇所にあった、土に吸着されている汚染物質が期間をおいて溶出してきた等の理由で汚染濃度の再上昇があった場合、フェントン反応の効果が期待できない。

コンクリートガラなどが多数埋まっている地盤やアルカリ系の改良地盤では、pH調整(フェントン反応を起こすのに必要な雰囲気に調整すること)が難しく、十分な浄化効果を得られない。

これらの各課題に対しては、現在、注入速度を小さくする、注入量を増やす、注入回数を増やす、コンクリートガラを撤去した後にフェントン反応剤を注入するなどして可能な範囲で対応を行っている。しかし、浄化の効果、効率を上げるためには、材料の改良や更なる施工上の工夫が必要と考えている。

今後も、トリタビリティー試験や実サイトから得られる濃度データを蓄積し、浄化実績を積んで、そこで得られた知見を公表してゆきたい。

[参考文献]

1)

中間哲志、他:ハイドロフラクチャー法を応用した汚染土壌の原位置浄化方法, 第10 回地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会, セッション6, No.111, 2004

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